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BLOG第262回 新しいリンを管理する薬について①

2024.06.13

新しいリンを管理する薬について①

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

今回の内容には全く関係ありませんが、最近畑仕事をはじめました。
昨冬から春にかけては水菜や菜の花、ブロッコリーを栽培し、
初心者ながらもうまく育てることが出来、
おかげさまで美味しく食べることが出来ました。
先日は夏野菜として、ナス、ピーマンの苗を植え、枝豆の種を蒔き、
また収穫を楽しみにしています。
また、このタイミングでマーガレットという花の種も一緒に畑の隅に蒔きました。
このマーガレットの役割をみなさまご存じでしょうか。
このマーガレットはコンパニオンプランツと呼ばれ、
野菜を育てるうえで害虫を除けてくれるそうです。
新しいことを始めると今まで知らなかったこと、知識が増えることは楽しいです。

 

さて本題ですが、今回はリンを下げる薬の話です。

 

リンは腎臓の機能が低下するにつれて尿から体外に排泄する機能が低下するため、
体内に蓄積しやすくなり、慢性腎臓病の患者さんは血清リン値が上昇しやすくなります。
このリンは、同じく慢性腎臓病の患者さんで上昇しやすいカリウムのように、
値が上昇した際にすぐに不整脈や徐脈などの合併症が起こるわけではありませんが、
高いリン値が継続することが大きな問題となります。
血清リンが高い状態が続くことで、血管石灰化や軟部組織の石灰化を起こし、
心血管疾患と呼ばれる心筋梗塞や狭心症、心不全、そして脳梗塞や脳出血など
生命や健康寿命に関わる重大な合併症につながります。
このため、透析を含めた慢性腎臓病の患者さんにおいては
リン値を適正な範囲におさめるように管理することが大切です。

 

日本人のリンの摂取量の平均は約1000mgといわれており、
そのなかで腸管から吸収され体内に入る量は650mgとなります。
元気な腎臓であれば過剰となったリンは尿から体外に排泄することが出来ますが、
透析患者さんの場合には尿から排泄できないリンが体内に残り、貯まっていきます。
透析患者さんにおいてはリン制限食として一日あたり800-1000mg程度に制限することが勧められており、
そして透析によりある程度リンは除去できますが、リン制限食や週3回の血液透析行っていても
一定量のリンは蓄積されます。
また、過剰なリン制限は蛋白摂取不足にもつながり、筋力や体力の低下をもたらし、
健康寿命を短くしてしまう懸念もあります。

 

そこで慢性腎臓病、特に透析の患者さんのリン管理において重要となるのが
血清リン値を下げるための薬となります。
リンを下げる薬は、これまでいくつかの種類があるものの、
作用としてはリン吸着薬と呼ばれるタイプの薬のみが発売され使用されてきました。
このリン吸着薬は食直前や食直後に服用することで食べ物に含まれるリンを腸管内で吸着し、
便とともに体外へ排泄する作用となっています。
この吸着薬は、服用錠数が多くなりやすいことや便秘をおこしやすい傾向にあること
(そもそも透析患者さんは水分摂取の問題などもあるため便秘しやすいことが知られています)
などの改善が期待されるポイントもありました。
そのような状況のなかで、先日新しい作用の薬が登場しました。

 

次回のブログに続きます。