SGLT2阻害薬のCKD患者における骨への影響とは?
森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆さま、
こんにちは、院長です。
個人的な話ですが、食へのこだわりとして美味しい魚を安く買うことが日々のテーマです。
先日海の近くの魚屋に行き、生きたミシマオコゼを買いました。この魚はややグロテスクな風貌で、聞いたこともない方が多いかと思います。魚好きな私は本や水族館でみることはありましたが、実際に生きたミシマオコゼを買ったのは初めてです。ハタやヒラメなど市場に流通する人気の魚より、かなり安価で購入することができ、当日そして数日寝かした後に食べてみましたが、それぞれ違った美味しさで想像をかなり超える美味しい魚に出会えてうれしかったです。
今回はこれまでも触れたことがあり、そして前回のブログでも話題の一部となったSGLT2阻害薬について、また違った観点であり慢性腎臓病(CKD)の方にとっては重要であるポイントである、SGLT2阻害薬と骨(骨折のリスク)に関する話題です。
SGLT2 inhibitors and bone health in CKD
Clinical Kidney Journal(CKJ). 2026; 19: no 3: sfag021
BLOG第431回 糖尿病性腎臓病治療の最近の進歩と今後の期待
CKDの患者さんでは、骨折のリスクが一般の方より高いことが知られています。腎臓は老廃物を排泄するだけではなく、カルシウムやリン、ビタミンDなどのバランスを調整する働きも担っています。そのため腎機能が低下すると骨の代謝にも影響が及び、骨が弱くなりやすくなります。近年では、このような状態を「CKD関連骨粗鬆症(CKD-associated osteoporosis)」として捉える考え方も提唱されています。
SGLT2阻害薬は、本来、腎臓の尿細管で糖とナトリウムの再吸収を抑える薬です。しかし、その作用に伴い、リンの尿細管での再吸収が増加し、副甲状腺ホルモン(PTH)、FGF23と呼ばれるホルモンに変化が生じることが報告されています。これらは骨の代謝に関係するため、理論上は骨にも何らかの影響を与える可能性があります。実際に、一部の研究では骨吸収に関連する指標の上昇が報告されています。
では、実際に骨折は増えるのかという点については、現時点では明確な結論は出ていないようです。過去にはSGLT2阻害薬で骨折リスクの増加が報告された研究がありましたが、その後の大規模臨床試験では同様の結果は一貫して認められていませんでした。また、骨密度についても低下を認めた研究と認めなかった研究があり、結果は一致していませんし、ひとつの研究では、SGLT2阻害薬を1年間使用しても骨代謝マーカーや脊椎の骨密度に有意な悪化は認められませんでした。しかしこれらの研究にもいくつかの限界があり、結果を過度に一般化するべきではないと指摘しています。また、これまでの研究の多くは骨折や骨密度を主要評価項目として設計されたものではなく、さらなる検証が必要と考えられています。
さらに、SGLT2阻害薬による骨折リスクの変化があったとしても、それが骨そのものへの影響によるのか、あるいは血圧低下や転倒などを介した間接的な影響なのかは明らかではなく、この点についても今後さらに検討が必要であると述べられています。
私が特に興味深いと感じたのは、この論文がSGLT2阻害薬の骨への影響を議論するだけでなく、慢性腎臓病患者さんの骨の状態をどのように評価するべきかについても詳しく解説している点です。従来から用いられているカルシウムやリン、副甲状腺ホルモンに加えて、骨密度検査や骨代謝マーカーも活用する重要性を指摘しています。慢性腎臓病では骨の異常が複雑であり、単一の検査だけでは十分に評価できないことがあるためです。
現時点では、SGLT2阻害薬による腎保護効果や心血管保護効果の利益は非常に大きく、骨への影響を理由に使用を控えるべきというエビデンスはありません。一方で、慢性腎臓病患者さんはもともと骨折リスクが高いため、薬剤の効果だけでなく骨の健康にも目を向けながら診療を行うことが大切であると、この論文は教えてくれます。
森下記念病院では、慢性腎臓病や糖尿病の治療だけでなく、CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)や骨粗鬆症の評価にも力を入れています。骨密度を測定する検査も行うことができ、日々の骨の状態の管理に役立てています。引き続き、相模原市のみならず、町田市・大和市など近隣のエリアの、腎臓を守る治療とともに骨折予防にも取り組んでいきます。







