透析部門

腹膜透析Q&A

腹膜透析に関する疑問、質問にお答えします
  • Q
    日本ではなぜ血液透析に比べて腹膜透析が普及していないのですか?
    A
    腹膜透析は腎不全の小児からご高齢の方までほとんどの方に適応のある透析療法です。日本では約1万人、世界中では約10万人の方が腹膜透析を続けています。腹膜透析をうけているのは透析患者さん全体のなかで、ヨーロッパの多くの国では約20%、ニュージーランドやオーストラリアでは30-50%、香港では70%の方が腹膜透析を選択されていますが、日本での割合は5%未満に過ぎず、これは世界でも非常に少ない割合となっています。
    わが国の腹膜透析の普及率が低い理由としては、血液透析の施設が多く、通院に比較的時間を要さないこと、腹膜透析を実施できる医療機関、医療スタッフが血液透析にくらべて圧倒的に少ないことが最大の原因と考えられます。 当院には腹膜透析の経験が豊富であり、利点を十分に熟知した医師、看護師がおりますので安心して腹膜透析をはじめていただけると思います。
  • Q
    腹膜透析を始めるときにはどのようなスケジュールになりますか?
    A
    まずは外来で事前に腹膜透析が安全に行えるかのいくつかの検査(CT・レントゲン・採血など)を行います。事前検査結果を確認し、入院予定(入院期間は約2〜3週間)を決めます。入院後はまず、透析液を腹腔内に出し入れできるように、「腹膜透析用カテーテル」というシリコンでできた柔らかい管を埋め込む手術を行います。この手術は当院では局所麻酔、静脈麻酔もしくは腰椎麻酔を組み合わせて、極力痛みが無く、入眠しながら行えるようにコントロールしています。カテーテルの手術をしたあとは約2週間での退院を目標に手技を習得するプログラムを組んでおります。また、退院前には、ご自宅で安心して腹膜透析が出来るように、ご自宅に看護師が訪問させていただき、環境や必要物品の確認をさせていただきます。
  • Q
    腹膜透析を行う場合に日常的に痛みはありますか?
    A
    腹膜透析を開始した直後は、腹膜透析液貯留によるお腹のはりを感じる場合があります。また、お腹の中のカテーテル(管)が肛門の近くにあるための違和感、液の出し入れの時に軽い痛みを感じる場合があります。しかし、これら症状は苦痛となる場合はなく、1ヶ月以内にほとんど消失します。通常、治療を開始し安定したら、痛みを感じることはありません。
  • Q
    透析液の交換(バッグ交換)の手順は難しいですか?
    A
    操作自体は決して難しくありません。ご高齢の方でも、繰り返し練習することで、ほとんどの方が手技を習得することが出来ます。大切なことは、細菌で汚染されないように清潔操作を行うことです。患者さんご本人だけでは不安な場合には、ご家族の方にも手技を指導させていただいております。また、訪問看護師によるサポートも受けられる場合もあります。
  • Q
    シャワーやお風呂に入ることはできますか?
    A
    基本的にはカテーテル(管)や出口部が濡れないように、ビニール製の袋をお腹に貼り付けることで、入浴は可能です。出口部の状態が良ければ、出口部に袋をつけない(オープン)状態でシャワー浴することも可能です。
  • Q
    腹膜透析を始めると、食事に気を付ける点はありますか?
    A

    腹膜透析を始める際に、改めて個人個人にあった食事指導を受けていただくことになります。ここでは食事における注意するポイントを列挙します。

    塩分
    塩分摂取は極力控えていただき、腎不全保存期と同様に6g以下/日を目標にします。
    カロリー
    透析液にはブドウ糖が含まれるためカロリー摂取となります。カロリー摂取過多にならないように注意して下さい。
    カリウム
    腹膜透析ではカリウムが下がりやすい傾向にあり、制限は緩くなります。腎不全保存期に比べ、生野菜や果物などの摂取が許容される場合が多くなります。
    水分
    腹膜透析は残った腎機能(尿量)の維持しやすいことが特徴であり、尿量が確保できている場合は水分制限が緩やかになります。
    蛋白質
    基本的には蛋白摂取量(グラム)=標準体重(キログラム)×(1.0〜1.2)となります。保存期よりやや多く蛋白を摂取することが可能です。
  • Q
    旅行はできますか?
    A
    必要な物品と透析液を旅行先にあらかじめ手配(配送)、もしくは持参することで基本的にはどこでも旅行することが可能です。海外旅行に関しても特殊な地域を除けば可能です。まだ腎機能がある程度残っている方であれば、一泊程度の旅行であれば、腹膜透析をお休みして出かけることも可能な場合もあります。旅行を計画するときはあらかじめかかりつけの医療機関のスタッフと早めに相談して交換スケジュールや注意点など確認しましょう。
  • Q
    腹膜透析にかかる費用はどれくらいですか?
    A
    人工透析を受けている慢性腎不全患者様は、血液透析であっても腹膜透析であっても、同様の医療福祉制度を利用することが出来ます。
    加入中の健康保険から特定疾病療養受領証を取得すると、人工透析に関わる医療費の自己負担が月1万円(所得によっては2万円)になります。また、身体障碍者手帳を取得するとことで更生医療や市町村が実施している障碍者医療費助成制度を利用でき、自己負担がさらに軽減される場合があります。身体障害者手帳を取得すると、その他にも様々な福祉サービスを利用することが出来ます。詳細はお住まいの地域や患者様の状況によって異なりますので、病院のソーシャルワーカーや市町村の担当者にお問い合わせください。