腎不全の治療について

腎不全の原因と診断

腎不全の原因は何か

腎不全の原因はいろいろありますが、人工透析治療を始めた患者さんの原因で最も多いのが、糖尿病性腎症で4割近くを占めているといわれています。慢性腎不全になると、腎機能の回復は見込めず、高度な腎機能低下では多くが末期腎不全へと進行します。最終的には、腎臓移植や人工透析療法が必要になります。その次に多いのが慢性糸球体腎炎、腎硬化症です。ここでは腎不全を招く原因の主だったものについて詳しくご説明します。

糖尿病性腎症ってどんな病気なの?

⇒糖尿病が原因で起きる腎臓合併症です

糖尿病は血液中の血糖が増えた状態です。血管の中の血糖が高くなると、腎臓に血液を運ぶ血管と腎臓から血液を運び出す血管が広がります。そのため、腎臓に運ばれる血液量と運び出される血液量が増え、腎臓にはたくさんの血液が流れ込みます。そうなると腎臓内の血圧が上がって過度の圧力がかかり、腎臓の細胞がダメージを受けて腎機能が悪化してしまうのです。

慢性糸球体腎炎はどんな病気なの?

⇒糸球体の炎症で、たんぱく尿や血尿が1年以上続く病気の総称です

糸球体は腎臓の中にあって、血液をろ過する役割を果たしています。慢性糸球体腎炎の原因は、免疫学的なメカニズムだと考えられています。免疫は体にウイルスなどの病原菌が侵入した際に、入ってきた病原菌を追い出そうとする働きです。実際には抗体が病原体にくっついて退治していますが、病原体をやっつけるためにつくられた抗体が糸球体を傷つけてしまうので、糸球体腎炎を起こすといわれています。
糖尿病腎症、慢性糸球体腎炎に次いで腎不全の原因となっているのが、腎硬化症です。高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化を起こした状態のものです。腎臓の血管は硬くなるのと同時に狭くなって腎臓への血流が減ることから、尿が作られなくなって腎不全を引き起こします。このほか腎不全の原因を招くものとして多発性嚢胞腎や慢性腎盂腎炎、SLE腎炎などがあります。

急性腎不全の原因は?

⇒全身疾患によるものや医療行為に伴うものなどさまざまです

急性腎不全も慢性腎不全と同様に原因はいくつか考えられます。腎不全の原因がどこに起きているかによって、腎前性、腎性、腎後性の3つに分けられます。
腎前性は腎臓に十分な血液量が流れない状態です。他の病気などで血圧が下がると腎臓に流れる血液が減り、尿が作れなくなります。腎前性腎不全の原因としては、脱水、大量出血、心不全、重症感染症(敗血症)などが挙げられます。
腎性に含まれるのは、腎臓そのものに原因がある場合です。急性腎炎や急性間質性腎炎などの腎臓疾患のほかに、手術や抗生剤、抗がん剤や造影剤といった医療行為に関連したものや、腎臓内の血管の病気としては腎梗塞、腎動脈血栓などがあります。腎臓に流れる血液が減ると、酸素が腎臓の細胞に届きにくくなり、腎臓の細胞が死んでしまいます。中でも尿細管の細胞は酸素が少ないとダメージを受けやすいので、血流が再開しても尿細管はすぐに回復せず、新しい細胞が機能するまで約1週間は尿が作られなくなってしまうのです。
腎後性は尿が腎臓を出た後にある場合をいいます。腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に溜められて排泄されますが、その通り道を妨害されると尿は体の中に溜まってしまいます。前立腺肥大、尿管結石、膀胱がんなどが原因として考えられます。
急性腎不全は慢性腎不全と異なり、適切な治療によって腎機能が回復する可能性があります。

腎前性

腎実質には異常はない。循環障害(大出血、心原性ショックなど)によって腎血流量が減少したことによって起こる腎不全

腎性

急性腎炎、抗菌薬、重金属、農薬などの腎毒物質によって起こる腎不全

腎後性

尿管閉塞・圧迫(前立腺肥大症、泌尿器癌、結石)などの尿路の異常によって尿が排泄できないために起こる腎不全

急性腎不全の分類

腎不全の診断はどうやってするの?

⇒血液検査と尿検査をすれば、腎機能の状態が分かります

腎臓に障害があると、血液中のたんぱく質が尿に漏れ出すので、尿中のたんぱく質を測定することで、腎臓の状態を検査します。血液検査では、血清クレアチニン値を調べます。血清クレアチニンとは血液中にある老廃物の一種で、本来ならば尿に排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排出されず血液中に溜まっていきます。そのため血清クレアチニン値が高いと、腎臓のろ過や排せつがうまく機能していないことが分かります。

腎不全の診断基準は?

⇒血液検査と尿検査で定められた基準で、腎臓の重症度を評価して診断します。

腎臓の働きを判断するのに利用する代表的な数値が、血清クレアチニン値で、血液中のたんぱく質の濃度で調べます。腎障害を示唆する所見(特に0.15g/gCr以上の蛋白尿もしくは30mg/gCr以上のアルブミン尿がある)が基準になり、数値の高い人は腎機能が低下していると考えられます。
もう一つはeGFR(推算糸球体ろ過量)という指標で、腎臓が1分間にどの程度、尿のもとを作ることができるかが分かります。これは数値が低い人ほど腎機能が低下しています。この2つの指標と尿中のたんぱく質から腎臓の状態を評価します。つまり、血清クレアチニン値が高いほど、またeGFRが低いほど、腎臓の働きが低いと診断されるのです。健康な人なら100ml/分/1.73m2なので、eGFRが60だと、腎臓機能は健康な人の約60%に低下していると考えられます。

CKD重症度分類表
日本腎臓学会編:「CKD診療ガイド」2012より引用、改変

直近で受けた健康診断や人間ドックで検査結果があれば、ご自分のeGFRとたんぱく尿の数値を基に、どの枠に当てはまるのかを調べてみてください。よく分からない場合は、健診を受けた機関や病院の医師に相談してみましょう。