透析血管外科

透析・血管外科 ドクターインタビュー

02Staff Interview

透析・血管外科は透析治療の

シャント血管の造設、修復をします
医師
SACHIKO HIROTANI
透析・血管外科

患者さんの生涯のバスキュラーアクセスを管理します

腎臓が弱くなり慢性腎不全の状態になった患者さんは、透析治療をうけることになります。透析とは、患者さんの体から血液を採り出し、それを機械に通して毒素を取り除き、綺麗になった血液を体に返す治療です。このような透析治療を有効に行うためには、生来の血管よりも多くの血が採れて返せる太い血管、バスキュラーアクセス(VA)を、手術で造設する必要があります。

透析・血管外科とは、このようなVAを新規に造設したり、使用しているうちに細くなったり硬くなったVAを修復したりする診療科です。

VAは使用していくうちに少しずつ形が変わってくるものです。なぜかというと、VAになった血管達には相当なご苦労をかけてしまっているからなのです。VAとは前述したようにたくさんの血が流れるように作り変えた血管なのですが、すると血管としては、突然今までの10倍から100倍の量の血を流し通す役割を容赦なくあたえられ、かつまた常に高い圧力に耐え続けるという過酷な状況にさらされることになります。そしてこの状態が長く続くと、血管壁は分厚く硬くなるという、一種の生体防御反応が起こってきます。その厚くなった血管壁が血管内腔に張り出してくると、VA血管が狭くなる狭小化につながり、それがさらに進行すると血管が閉塞してしまうことになります。

このような経緯で血管が細くなるのは、生物として一種の正当な防御反応ですし、言い方を変えると働かせすぎた血管に疲れが溜まった結果でもあります。なので血管が狭小化するということは、ある意味、大役を任されたVAの宿命ともいえることなのです。

とはいえVAが狭小化して使用できなくなると、その持ち主の人は透析が受けられなくなり、困ってしまいます。なので、VAの変形に対しては、必要時には小さな修復を加えて、いつも安定して流れ続けてもらい、VAと、その持ち主である人間とが折り合いをつけていく必要があるのです。そのためには、定期的にVAの検査をしたり、必要時に修復したりする、それが快適な透析ライフを送るにあたって重要なことになのです。

心と体の両面から患者さんの負担を減らすように努めています

腎臓の弱くなった患者さんは、透析導入間近になると体調も優れず、精神的にも落ち込んでくることがあります。そんな状況でVAの手術を受けるのは気が進まないことなのですが、しかし実際に手術を受けて透析治療を受けてみると、徐々に体調不良が良くなってくることが実感できます。そうすると、同じように透析を受けている患者さんはたくさんいること、そしてバリバリと仕事をしたり、旅行を楽しんだりしている患者さんがすぐそばにいることにも気づき、みんなに励まされていることがわかるようになってきます。そのように患者さんが少しずつ確実に元気になっていく過程を私は見てきているので、透析導入前の患者さんが悲観的になりすぎないよう、不安を少しでも和らげ、減らせる負担は工夫して減らしてあげられるよう心がけています。

手術は誰にとっても不安なものです。ですので、VA新規造設が必要な患者さんの場合には、VA造設の目的と造設法・使用法、今後のメンテナンスなどについて分かりやすくご説明します。またVA再建術が必要な場合には、現在のVAの問題点、その状態と原因、複数の対策法、それぞれの対策法の結果に想定される効果と危険性などについて、どうするのがいいのか私の考えを伝え、その上で患者さんの気持ちや希望を伺います。そして最終的に実際の段取りを決めるという流れで治療に当たっています。いずれの場合であっても、VA手術が患者さんの心身の負担にならぬように丁寧に診察、説明し、事が大きくなる前に小さな軌道修正をして、なるべく軽い処置で安定した透析治療を継続していけるように努めています。

患者さんのライフスタイルに合わせたシャントを考えます

VAの状態は、日頃のメンテナンスの良し悪しにかかってきます。VAを丁寧に自己管理できる患者さんはよいのですが、視力や手の動き、あるいはご高齢などが問題で自己管理がしにくい患者さんもいらっしゃいます。ご家族のサポートはどうか、お一人暮らしなのか、福祉はどうか、通院は、地理的にはどうかなど、あらゆることを総合的に考え、患者さんにとって最も使いやすいシャントを作り、安全な態勢で管理できるように努めています。

腎臓病の患者さんをサポートするのが私の仕事です

私が高校生の頃は、舞台照明や東京タワーのライトアップなど、照明や建築・設計の仕事に興味がありました。でも、これらの仕事には天性の美的なセンスや才能がいるのだろうと考えました。センスや才能は残念ながら努力して何とかなるというものではありません。ところでしかし、自分には努力する才能、これは結構あることに思いつきました。私が希望していた職業の中の一つの医者、これは努力が必要な職業であるならば、自分の特性には合っているかもしれないと思い、医学の道に進むことにしました。そして医学生となり、高学年になって科を選考するにあたっては、もともと外科志望でしたので、いろいろな外科の話を聞いたうえ、腎臓外科に入局しました。どの外科の説明でも一様に業務がきついと言われていましたが、当時の腎外科医局長の、いろいろなこと(外科手術、移植症例の管理、透析治療、人工臓器、再生医療など)ができるという診療科の紹介に魅力を感じたからです。腎臓外科は、腎移植、あるいは腎不全患者さんの外科手術がメインの科です。ですので初めの10年は私も腎臓移植や膵移植、肝移植などの症例をたくさん経験させていただきました。また出張先の病院では一般消化器外科の手術も多く担当させていただきました。その知識と技術をベースにして、医者として後半の20年は透析患者さんのVA手術を専門として研鑽を積んでまいりました。

大掛かりな治療ではない、安心な医療の提供を目指します

東京女子医大腎臓外科の時代、診断治療に当たった患者さんは、そのほとんどが前医での治療に難渋し、当院に紹介されてきた患者さんでした。そのため既に複雑な病態に陥っている方が多く、かつ、もともと合併症も多数持っていらっしゃるので、診断にしても手術にしても難しく、他科と連携してかなり特殊な手術を行うこともしばしばありました。そのような大学病院での研修期間は、難しい病態の患者さん達は、何が原因でそうなったのか、どのような過程を経てきたのか、結局何をしたら治ったのか、どうしたら防げていたのか、等々のことを絶えず考え続けていた貴重な時間でした。

これからは、大学病院時代に得た知識と経験を森下記念病院のスタッフの皆と共有し、圧倒的チームワークで優しく丁寧な治療が行えればと思っています。小さなトラブルにも先回りして対応し、かつて自分が大学病院で行っていたような大掛かりな治療をせずとも済む、安心な医療を提供できることを理想としています。

スムーズな診療や治療のための準備をしています

もし自分が受けている医療に不安なことがあったら、まずは自分がかかっている病院の先生や看護師さん、技師さんとよく話をしてみてください。医療は魔法ではありません。周囲の人たちと良い連携を取り、一つ一つのことを順々に解決していくことが大切です。もし対策を練るための一つの方法として当院を受診されるのであれば、その時にはぜひ紹介状を持参してください。確実な情報を十分に集めてから方向性を決めることは安全な医療を行う上では必ず必要なことです。

他院からの紹介で来られる患者さんには事前にFAXなどで情報を得ておき、来院当日には必要だと考えられる検査や処置が行えるように準備をしておきます。事前に連絡をしていただければ、当日スムーズに診察や治療を受けていただけるように外来の看護師が対応いたします。安心してお越しください。