腎不全の治療について
CKDや腎不全はこのように治療します
CKDの治療には生活習慣病の是正が重要となります。禁煙や肥満の改善が必要になりますし、食事では腎機能障害の程度によって減塩やたんぱく質、カリウムの制限が必要になります。
血圧、血糖、コレステロールは、食事や薬でコントロールしながら目標値に納まるようにしていきます。腎機能の悪化によって引き起こされる貧血は、鉄材や赤血球造血刺激因子製剤を投与したり、骨折予防にはビタミンDの投与、血液が酸性になったら重炭酸ナトリウムの投与、さらには老廃物が体に溜まって尿毒症のリスクが高まれば、吸着炭を内服したりします。ここでは数ある治療方法の中で、一般的なものを中心にご説明します。
腎不全はどうやって治療するの?
⇒急性腎不全、慢性腎不全のステージによって治療法は異なります
急性腎不全は早期に原因を取り除けたら、腎臓の機能を回復できる可能性があります。脱水や出血で腎臓への血流が低下している場合には、出血の原因となっている病気を治療しながら、点滴や輸血で腎臓に血液が届くようにします。尿管結石によって尿が詰まった場合には尿管結石を取り除いたり、それができない場合には詰まっている部分に管を入れたりして、尿が流れるようにして腎臓の負担をなくします。腎臓の炎症を抑えるためのステロイドや免疫抑制剤が必要な場合もあります。必要に応じて短期間の透析治療を行うこともあります。
急性腎不全の際には食事療法も重要になります。発症した時や尿量が減った時、治療の成果が出て尿量が増える時期、回復した後などで食事の注意点が異なります。特に水分量やたんぱく質、塩分やカリウムなどで制限があります。医師や栄養士などの指導をきちんと守ることが大切です。
慢性腎不全は腎臓の機能を回復させることが難しいので、残っている腎臓の機能を維持することが基本になります。保存期においては、血圧を下げる薬や利尿剤、体にたまりやすいカリウムやリンを下げる薬、腎臓の炎症を抑えるためのステロイドや免疫抑制剤、腎不全の時期に現れる腎性貧血に対する注射などもあります。
食事の基本はたんぱく質、塩分、カリウム、リンの摂取を制限します。しかし、制限ばかりに気をとられて摂取カロリーが少なくなってはいけません。また、1日に摂っていい水分量が指示される場合もあります。
日常生活では体が疲れ過ぎないようにすること、過激な運動を避ける、体を冷やさない、風邪などの感染症に注意することなどがあります。場合によっては家事も禁止されることがあります。
透析はどのようにするの?
⇒血液透析と腹膜透析の2種類があり、主治医と相談しながらどの透析が最適かを判断します
透析には2種類あります。1つは血管に針を刺し、血液を引き出して機械を通し、きれいになった血液を再び血管に戻す血液透析です。もう1つは患者さんご自身の腹膜を介して行う腹膜透析です。透析療法は腎臓病を治す根本療法ではなく、腎臓に代わって老廃物や水分を調整する対症療法となります。
血液透析が短期の場合は専用の管を血管に留置して行いますが、長期の場合は腕などの血管にシャントもしくは人工血管（グラフト）と呼ばれる針を刺すための血管を作成します。シャント・グラフトは作成して使用できるまでに1か月程度かかるため、透析を開始する約1か月前に計画的にシャント・グラフト作成術を行います。手術は局所麻酔で1～2時間程度です。血液透析は外来の場合、週3回、1回4時間程度が一般的です。
もう一つの腹膜透析は自分の腹膜を利用して行う透析で、お腹に管を置く手術を行い、そこから透析液を注入し、一定時間置いた後に透析液を排出します。腹膜透析は自宅や職場で行える在宅医療です。
透析療法は一生継続する必要がありますので、日常生活や生活の質に大きく関わってきます。それぞれの仕組みや特徴を理解した上で、ご自分に合った治療方法を選択することが大切です。
透析以外の治療として腎臓移植もあります。腎移植には脳死・心停止したから腎臓の提供を受ける献腎移植と、親族から提供される生体腎移植があります。
透析の準備はいつ頃から始めるの？
⇒一般にCKDステージ４になったら準備を始めます
透析や腎移植のための準備は、一般的にCKDステージ４になったら始めます。余裕を持って準備することでCKDに伴うさまざまな合併症に対応ができ、さらに腎機能の低下が緩やかになることで、実際に透析や腎移植を開始するタイミングを先に延ばせる可能性があるからです。また3つの治療方法（血液透析、腹膜透析、腎移植）について十分な説明を受けることもできるので、自分に合った治療方法を選択できますし、治療法に応じた適切な準備期間を確保することもできます。主治医の先生から透析の説明があったら、ネガティブに受け止めずに前向きに話をして、自分の人生をよりよく過ごすために最適な治療法を選択しましょう。
