血液透析センター

腹膜透析について

腹膜透析(PD)の特徴

腹膜透析(PD:Peritoneal Dialysisの略称)はお腹の中に透析液を入れ、腹膜を使って透析(老廃物や水分の除去)を行う、からだにやさしく、自宅でできる透析療法です。お腹の中に入れる透析液の量は約1.5~2リットル程度で、透析液の出し入れをバッグ交換と言い、これを1日に4回程度行います。24時間かけてゆっくり透析をするので血圧の変動も少なく、痛みもありません。また、月に1回の通院で管理されるので、時間を有効に使えるため、自分の生活スタイルにあわせて透析療法ができると言えます。血液透析にくらべて残された腎臓の働きをまもることができるという利点もあり、透析療法であると同時に、保存期腎不全治療の延長と考えることもできます。当院では、腹膜透析から透析療法をはじめる“PD(腹膜透析)ファースト“を提案しております。

腹膜透析とは

バッグ交換の流れ

PD(腹膜透析)ファーストとは

腹膜透析(PD)の利点は、透析開始後も血液透析(HD:HemoDialysisの略称)に比べて長期間尿がでることです。そこで、透析療法はまず腹膜透析から始めて、できるだけ尿量(残った腎機能)を保つことを目標として治療を行います。その後、腎機能が減ってきたら(尿量の減少)、透析量を増やすための治療を考えます。具体的には週一回の血液透析とそのほかの週5-6日に腹膜透析を組み合わせる“併用療法”、あるいは完全に血液透析に移行を提案します。このように、長期的な視点で透析ライフを考え、始めにPDを選択する方法を「PDファースト」といいます。

腹膜透析(PD)の仕組みや原理について

お腹には腸や肝臓などの内臓がある腹腔というスペースがあり、それらの臓器やその周囲は腹膜で覆われています。ここに柔らかいシリコン性の細い管(腹膜透析用カテーテル)を埋め込みます。この管を通して腹膜透析液を腹腔内に注入し、その後一定時間(通常は6~12時間程度)透析液をためておくと、“拡散”と“浸透圧”という原理のもとで、体に溜まっている毒素や余分な水分・塩分が透析液に排出されていきます。その後老廃物の蓄積した透析液を捨て、次にふたたび新しい透析液を腹腔内に注入します。この流れをバッグ交換と言い、バッグ交換を1日3~4回くりかえすことで体に溜まった毒素や水分を取り除くことができます。 バッグ交換は1回につき、おおよそ30分前後で終了し、自宅もしくは職場で行うことが出来るので、病院への通院はは月1回が基本となります。

1.構造
  1. 薄い漿膜
  2. 多数の毛細血管が走り、表層には腹膜中皮細胞が一層並んでいる
  3. 体表面積とほぼ同じ面積(成人1.7~2.0m2
  4. 女性は卵管開口部で一部交通している
2.働き
  1. 内部臓器の固定・保護
  2. 浸出、漏出、吸収、分泌などの生理作用
  3. 50~100mlの漿液があり、潤滑油・感染防御の働き
PDの原理:腹膜
  • PDの原理:拡散(溶質除去)
    PDの原理:拡散(溶質除去)
    濃度の違う液体が半透膜を介して存在する時、
    高い濃度から低い濃度へと物質が移動し、同様の濃度になる現象
  • PDの原理:浸透圧(除水)
    PDの原理:浸透圧(除水)
    浸透圧の高い液体と低い液体が半透膜を介して存在する時、
    浸透圧の低いほうから高いほうへ液体が移動する現象
    ※PDでは浸透圧物質としてブドウ糖を使用

ご自身で行うこと

前項でお話ししたバッグ交換(透析液が入っている袋のチューブと、からだについている透析カテーテルとを接続し、透析液を出し入れする)と出口部消毒(カテーテルの入っている出口周辺を毎日清潔にすること)になります。

出口部ケア

バッグ交換に関しては、ご自身で操作するマニュアルタイプ、もしくは簡易的な機械を使って清潔に操作する方法もあります。

バッグ交換 実際の手技

ライフスタイルに合わせた透析療法

バッグ交換のスケジュール

CAPD:1日3~4回自分で透析液を交換する標準的な腹膜透析
APD:夜間就寝時にカテーテルと機械を接続し、自動的に透析液を交換する腹膜透析
バッグ交換の時間はライフスタイルによって調整することが可能です。ほかにも上記二つを組み合わせた透析方法や尿量が減ってきた場合の併用療法など、腹膜透析は患者さんのライフスタイルや状態に合わせて柔軟に対応できる透析療法です

CAPD:連続携行式腹膜透析

ライフスタイルに合わせた透析療法方法:1日4~5回のバッグ交換を行ない、24時間治療を実施する方法

APD:自動腹膜透析

ライフスタイルに合わせた透析療法方法:夜間のみAPD装置を用いてPDを行なう治療は夜間で終了する

腹膜透析(PD)+血液透析(HD)併用療法

ライフスタイルに合わせた透析療法方法:週に1回又は2週に1回、HDを併用原則としてHD当日はPDを実施しない

腹膜透析(PD)の長所

  • 循環動態にかかる負担が少ない(時間をかけてゆっくり水や老廃物を取り除くため、身体や心臓への負担が少ない治療です)
  • バスキュラーアクセスのトラブルがない(シャントやグラフトが必要ありません)
  • 穿刺痛がない(血液透析のように毎回治療のたびに針を刺す必要がありません)
  • 時間的拘束が少ない(自宅や職場でバッグ交換が可能であり、通院回数は月1回程度です)
  • 食事(とくにカリウム)制限が緩やか
  • 残っている腎機能が保たれる(血液透析では透析を開始してから数ヶ月で尿の量が減ってしまうことが多いですが、腹膜透析では尿が出ている期間が長くなる傾向があります)
  • 電力を必要とせず、いかなる環境でも透析が出来る
  • 患者さん自身が腎不全治療に積極的に参画できる

腹膜透析(PD)の短所

  • カテーテルを清潔に保つ必要がある
  • 透析液の交換(バッグ交換)、カテーテルのケアなどの操作が必要になる
  • 腹膜炎や出口部感染のリスクがある(ただし統計的には血液透析に比べてすべての感染症のリスクが高いわけではありません。)
  • 時間が経過し、ご自身の腎臓の働きや腹膜の働きが低下した際には、十分に老廃物、尿毒素を除去することが難しくなる(このため、尿量が減ったタイミングで血液透析との併用療法や、血液透析への完全移行が必要になります。)

腹膜透析(PD)と血液透析(HD)の比較

項目 腹膜透析(PD) 血液透析(HD)
透析方法 透析場所 自宅・会社など 医療施設
透析方法 毎日 週3回(4~5時間/回)
透析の操作時間 バッグ交換 約20分
APD回路セッティング
約10~20分
透析時間4~5時間/回+通院時間(3回/週)
透析を操作する人 患者自身、家族 医療スタッフ
通院回数 1~2回/月 2~3回/週
手術 カテーテル挿入術 バスキュラーアクセス造設術
抗凝固剤 必要としない 必要
症状 透析による苦痛や自覚症状 腹部膨満感を認めることがある 穿刺痛
血圧低下や不均衡症候群
日常生活 社会復帰 可能(有利) 可能
透析途中の活動性 活動できる 拘束される
感染に対する注意 腹膜炎、出口部感染 バスキュラーアクセス関連
入浴 入浴方法を習得する 非透析日に入浴
スポーツ できる できる
旅行 国内は制限なし
(透析液器材は携帯)
海外は事前準備が必要
長期の場合、事前に透析室の手配が必要
食事制限
  • 摂取エネルギー:腹膜吸収エネルギーを差引く
  • 食塩::厳重に制限
  • カリウム:制限なし
  • タンパク質:残腎あり、なしで変更
  • 摂取エネルギー:適切量
  • 食塩・水分::厳重に制限
  • カリウム
  • タンパク質:適切量
その他 カテーテル出口部ケア バスキュラーアクセス管理
費用 自己負担 入浴用品は自己負担 なし