お知らせ一覧

BLOG第6回 睡眠と感染症の関係

2020.05.28

睡眠と感染症の関係

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

緊急事態宣言は先日解除されましたが、
外出自粛の生活をしているうちに私は
早寝して十分な睡眠時間を確保する
生活リズムになっています。

以前から「風邪をひかないように早く寝よう」
という習わしを聞いたことがあるように、
睡眠は感染予防に有効であると考えられ、
多くの方はそのような行動をとった
経験があるのではないでしょうか。

 

しかし、実際に
「睡眠と感染の関連について科学的に検討した報告」があるのをご存知ですか?

 

今回はそんな日常の行動に関わる、睡眠と感染症の関連についての2016年の研究
Association of Insufficient Sleep With Respiratory Infection Among Adults in the United States. JAMA Intern Med. 2016 Jun 1;176(6):850-2.
をご紹介します。

 

そもそも睡眠障害または習慣的な睡眠不足にある人の割合はアメリカで5000-7000万人いるのですが、
そうした睡眠不足がどれくらい病気のリスクに関わっているかについては未だよくわかっていない部分も多いのです。
基礎研究や実験の範囲では、睡眠不足が感染症に対する抵抗力となる重要な免疫系に悪影響を及ぼすことを示すデータはありますが、実際にヒトで追跡調査を行った研究というのは多くありませんでした。

 

そこで、この研究では、睡眠時間と風邪、インフルエンザや肺炎を含む感染症の発生確率との関連を調べています。

 

アメリカのNational Health and Nutrition Examination Surveys (NHANES)上で2005年から2012年に登録されていた米国人22,726人(平均年齢46.2歳)を対象としてデータを抽出し、分析しています。平日の典型的な睡眠時間、医師から睡眠障害と診断されたことがあるか、睡眠障害があることを医師に相談したことがあるか、過去30日間の風邪、インフルエンザや肺炎を含む感染症に罹患したかの有無について統計的手法を用いて関連性が検討されています。

 

結果としては、以下の通りです。まず、調査対象者の睡眠時間の割合は、1晩で5時間以下が13.6%、6時間前後が23.0%、7~8時間が56.3%、9時間以上が7.1%でした。睡眠障害の診断を受けたことがある人は7.1%で、医師に睡眠障害があると相談したことがある人は25.0%でした。

 

対象者において、睡眠時間が7-8時間の人と比較して、
5時間以下の人は過去30日間に風邪や感染症にかかった割合が高いことがわかりました。

一方、睡眠時間が6時間前後、9時間以上の人には、
風邪や感染症にかかりやすい関連性は見いだされなかったということです。

その他、睡眠障害と診断を受けたことがある人や、医師に睡眠障害を報告したことがある人も、
風邪や感染症を報告する可能性が高い傾向があることがわかりました

 

ここで気を付けたいのは、この研究は、既存のデータから抽出して行われたものであり、
適切な睡眠時間をとれば風邪が予防できる、という因果関係を言い切ることのできるデータではないということです。

 

言い換えれば、
「いつも5時間しか寝てないよ!」という人が
「風邪や感染症を予防するために今日から8時間寝よう!」
と思って実行した際に、必ずしもそれで予防できるわけではない、
ということです。

 

「5時間しか寝られない生活をしている人」は、きっとそれだけ仕事や日々の生活が忙しいでしょうし、
その分、外と他人と接触して活動しているかもしれません。
反対に、「毎日しっかり7-8時間寝られている人」というのは、比較的時間に余裕がある生活をできていることでしょう。

 

体感的にはやはり普通の人は睡眠不足になると仕事のパフォーマンスも落ちますし、
なんだか体調を崩しやすいような気がします。
そういう意味では、「なるべく風邪や感染症にかかりたくない」という方が
十分な睡眠時間をとるということは妥当な戦略であると思います。

 

新型コロナウイルス感染対策の一環にも十分な睡眠は提示されています。
十分な睡眠を確保して、体力を維持して健康な生活を送ることを心がけていきたいと思います。