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BLOG第7回 睡眠とCKD(慢性腎臓病)の関係

2020.06.03

睡眠とCKD(慢性腎臓病)の関係

 

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

前回の私のブログで睡眠と感染症の関連についての記事を紹介しました。
そこで、今回は当院が注力している腎臓に関連した記事として、

CKD(慢性腎臓病)発症のリスクと睡眠の関係についての論文
Sleep and the Risk of Chronic Kidney Disease: A Cohort Study. J Clin Sleep Med. 2019 Mar 15;15(3):393-400. doi: 10.5664/jcsm.7660.

をご紹介します。

 

この研究はCKDの発症に対する睡眠の影響について、今までの研究が少なかったことを背景に、
大規模コホート研究として睡眠とCKDの発生率との関連を調査することを目的として行われました。

 

1996年から2014年の間に、20歳以上のCKDのない194,039人の台湾人を対象としています。
CKDは、eGFRが継続して60 mL/min/1.73 m2未満と定義されています。
睡眠時間と睡眠の質に関する情報はアンケートから取得され、
時間と質に関して併合した睡眠スコア(最低2~最高9点)も作成されています。
統計学的に睡眠時間、睡眠の質とCKDの発症について調査されました。

 

睡眠時間に関して、4時間未満、4〜6時間、または8時間以上睡眠した参加者は
睡眠時間が6〜8時間だった参加者と比較して、CKDを発症するリスクが高いという結果でした。
また、睡眠の質に関しては、中途覚醒、寝つきが悪い、または睡眠薬または鎮静剤を使用していた参加者は、
良質な睡眠が得られた参加者と比較してCKD発症のリスクが高い結果でした。
さらに、睡眠スコアが4未満、4〜6の参加者は、6より高い睡眠スコアの参加者と比較して、
CKDのリスクは高いという結果でした。

 

本研究では、BMI、高血圧、糖尿病、心血管疾患などCKDのリスクとなる他の交絡因子を排除しても
同様に睡眠の時間と質がCKD発症のリスクとなる結果を得られており、睡眠とCKDの関連が強固であることが示されました。
睡眠とCKD発症のリスクを結びつけるメカニズムは明らかではありませんが、睡眠障害が交感神経系の活性化をもたらすこと、睡眠障害による全身性炎症が糸球体内皮障害とタンパク尿を引き起こす可能性があることが示唆されているようです。

 

この研究からは、不十分な睡眠時間もしくは長すぎる睡眠時間、そして睡眠の質が悪いとCKD発症のリスクが高くなることがわかりました。
したがって、睡眠を改善してCKDを予防するための戦略を立てるときは、睡眠時間と睡眠の質を考慮する必要があるようです。

 

睡眠に関しては今回のCKDとの関連以外にも、前回の感染症や、高血圧や腫瘍など多くの病気との関連が報告されています。
私自身にも言えることですが、自粛生活を経て、良い睡眠のリズムを確立できたのであれば、今後も健康のために維持していきたいところです。