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BLOG第95回 ”腎疾患治療薬update”の一部を執筆しました。

2021.10.07

“腎疾患治療薬update”の一部を執筆しました。

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

今回は、2021年8月に発行された腎疾患治療薬update(腎と透析2021年91巻増刊号 東京医学社出版)のなかで、各論「不眠症:睡眠薬」の執筆を担当しましたので、ご紹介致します。

腎疾患治療薬update腎疾患治療薬update2

 

内容としては主に透析患者さんにおける睡眠障害とその対応について執筆しております。簡単に紹介させていただくと、睡眠障害の身体的・精神心理的な原因、適切な睡眠習慣を促す睡眠衛生指導、治療のアルゴリズム、睡眠薬の種類と選択、透析患者さんにおける睡眠薬使用の注意点について述べさせていただきました。

 

そのなかで、改めて重要性を感じたことは、睡眠衛生指導による睡眠の質の向上です。これは簡単に説明すると以下のような指導内容となっています。

 

・適切な睡眠のスケジュールについて:
不規則な睡眠が入眠や覚醒の体内調整を妨げるため、休日等であっても、なるべく規則的な睡眠リズムの確保を心掛ける。午後3時以降の昼寝を避ける。読書やテレビ鑑賞などをするために寝床に入ることを避ける(寝床には「寝るため」にはいること)。

・適切な運動について:
定期的な運動は身体的疲労により寝つきを良くし、深い睡眠を得ることが出来る。とくに適度な有酸素運動が推奨される。ただし寝床に入る3時間以内の運動は避ける。

・適切な環境について:
寝室はなるべく静かな環境にする。また寝室を快適な温度(やや涼しい)に保つ。

・適切な食生活について:
空腹感は睡眠を妨げるため避ける。一方で、就寝前に脂質を多く含む食事を摂取することは睡眠を妨げるために避ける。基本的には就寝前3時間以内の多量の食事は避ける。

・就寝前に避けるべき習慣について:
アルコール摂取は深い眠りを妨げるため避ける。喫煙はニコチンに精神刺激作用があるために避ける。カフェインは寝つきが浅くなり睡眠が浅くなるため避ける。また、過剰な水分摂取も夜間の尿意により睡眠を妨げる可能性があるため避ける。

・ベッドや布団に入った後に避けること:
テレビやスマートフォンの使用を避け、悩みについて深く考えることを避ける。

 

睡眠障害がある際には上記した睡眠衛生を是正し、それでも改善しない場合には睡眠薬を適切に使用する、もしくは既に睡眠薬を使用している場合にも睡眠衛生の是正を心掛け、睡眠薬の減量や離脱を検討することも重要と考えられます。そしてもう一点大切なことは、決して睡眠薬は「悪いもの」ではなく、透析患者さんには上記のように睡眠衛生を整えたうえでも睡眠障害を合併される方は多くいらっしゃいますので、睡眠薬の特徴を把握して、適切に使用することだと考えます。

 

僭越ながら、この執筆が少しでも透析医療現場の役に立てればと思います。