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BLOG第182回 骨のおはなし

2023.06.05

骨のおはなし

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは!検体検査課です。

 

すっかり暖かくなり、もう夏…?というような暑い日もでてきましたね。

先日私の母が病院の検査で骨密度の検査を受けたのですが、値が悪くなっていたと落ち込んでいまして…。
以前放射線課さんもお話されていましたが、今回は検体検査課の視点から骨粗鬆症(こつそしょうしょう)についてお話させて頂こうかと思います。
過去の関連ブログ➡ BLOG第8回 骨密度と骨質

 

骨粗鬆症は簡単に説明すると、新たに骨を作る働き(骨形成)が低下し、古い骨を壊し吸収する働き(骨吸収)が盛んになるため骨が脆くなり、骨折などを起こしやすくなる病気です。

粗は“荒い”と言う意味で鬆は“す”とも読み、“す”の入った大根のように骨の内部がスカスカになってしまった状態をいいます。
骨形成と骨吸収を合わせて骨代謝といい、しなやかな骨を保つために骨代謝を繰り返しています。骨量は18歳位をピークに、その後年齢とともに減少していきます。骨量減少はある程度は生理的現象ですが、これが高度となると骨が脆弱になり、ちょっとつまづいたり転ぶなどの軽微な外力で骨折を生じやすくなってしまいます…。

圧倒的に女性に多く、特に閉経後に多く見られるため、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられていますが、それ以外にも透析患者様など腎臓疾患のある方、糖尿病、関節リウマチなどの疾患も原因として挙げられます。カルシウムの摂取不足、無理なダイエットや運動不足でも起こるので、まだまだ若いから~と油断できません…!

 

 骨代謝がどの程度体内で行われているのかを知ることは、骨粗鬆症の程度や今後の進行を知る上で非常に大切なことです。骨代謝の過程では様々な物質が作られ、血中に流れ出ます。血液や尿を採取してこれらの物質の量を測定することで骨形成・骨吸収の程度を知ることが出来ます。これが骨代謝マーカーと呼ばれるもので、様々な種類があります。

骨代謝マーカーを調べる目的には主に以下の5つが挙げられます。

  1. 骨密度の低下を予測する
    骨代謝マーカーと骨密度の低下には負の相関があるとされます。マーカーが上昇すると骨密度が低下している可能性があります。
  2. 骨折の発症リスクを予測する
    骨代謝マーカーは独立した骨折予測因子です(特に女性)。骨代謝マーカーの上昇は骨折リスクが高くなっている可能性があります。
  3. 治療効果を調べる
    実際の臨床で一番の目的とされています。治療判定効果、つまり現在使用中の薬剤の効果を調べることです。(投薬の開始前・後のマーカー値による検討など)
  4. 治療継続の意欲に繋げる
    結果を患者様にフィードバックすることにより、特にマーカーが低下した方(=治療効果が出ている方)では治療継続して下さる方が増える傾向にあります。
  5. 休薬後の経過をみる
    治療効果発揮後に一時的に内服などの治療を中断した際に、マーカーを定期的に測定することで治療再開などの指標とすることが出来ます。

 

骨代謝マーカーには(1)骨形成マーカー、(2)骨吸収マーカー、(3)骨質マーカーがあり、使用している治療薬に合わせて測定すべきマーカーを選択します。
例えば、

  • 骨形成を促進する治療薬を使用→骨形成マーカー 
  • 骨吸収を抑制する治療薬を使用→骨吸収マーカー 
  • 骨質を改善する治療薬を使用 →骨質マーカー

といった風に治療薬の使用目的に合わせて測定マーカーを選択します。骨代謝マーカーとX線を用いた骨密度(骨量)の測定などを併用することで、発症リスクや現在の状態、治療効果などを知ることが出来ます。

 

骨や筋肉が弱くなることが様々な気力や意欲の低下を招くこともあるので、まずは骨量を減らさない生活習慣(カルシウムやビタミンD、ビタミンK、タンパク質のバランスの良い食事、適度な日光浴と運動)を心掛けることが大切です。その上で骨粗鬆症の痛みが原因の悪循環にならないように早めの対策や検査・治療をしていきましょう!