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BLOG第201回 「巷で言われる「高血圧」って、そんなに悪いのか?」

2023.09.04

「巷で言われる「高血圧」って、そんなに悪いのか?」

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆さま、こんにちは。
2023年7月より新たに当院に着任いたしました、腎臓内科医師の石出崇と申します。

 

約60年にわたり地域の皆様に密着しつつ、腎臓疾患に対するトータルケアを提供している施設のスタッフの一員となり、喜びと緊張感を感じながら、毎朝出勤しています!

 

私は今までいくつかの大学病院にて、急に具合が悪くなり緊急入院される患者様を診療する「急性期医療」を担当し、大学院では体に侵入した細菌をいち早く攻撃してくれる好中球という細胞が、誤って腎臓を傷めつけてしまうような腎臓病についての研究に従事しておりました。微力ながら曲がりなりにも、これら急性期医療や大学院で学んだ知識をうまく、分かり易い形で地域の皆様に応用・還元することができるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

さて、私の自己紹介はここまでにさせて頂いて、今回は私の腎臓内科外来にて、何回か題名のようなご質問がありましたので、ご紹介をいたします。

 

「高血圧」とは、読んで字のごとく血圧が高い病気で、腎臓をはじめ脳や心臓、眼といった全身に張り巡らされている大小さまざまな血管がその圧力で傷いてしまい、その傷が深くなると脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気を引き起こしてしまうものです。頭や心臓のご病気を発症した場合、昔と比べ救命率こそ劇的に改善しているものの、もとのしゃっきり歩けていた健康な状態には戻れなくなってしまうこともあります。

 

いろいろな定義がありますが、概ね血圧が140/90mmHg以上であれば高血圧症と診断されます。「mmHg」というなじみのない単位でイメージが湧きにくいかと思いますが、「160mmHgの血圧で、血液を約2mの高さに噴き上げる力がある」と例えられます。

 

そんな大きな力で血管が痛めつけられているところに、脂質異常症や糖尿病などが合併していると、「動脈硬化」と呼ばれる固い血管となります。その固さでますます血圧も相乗効果で高くなることで、合併症の多い方やご年齢の高めの方に、最終的に脳卒中・心臓病や腎臓病をきたしてしまうことがあります。ご参考までに、そういった病気になりやすい数値・リスクを、2019年の日本高血圧学会ガイドラインよりご提示します。

診察室血圧に基づいた脳心血管病リスク層別化
血圧リスク

出典元:高血圧治療ガイドライン

 

 

少し怖い表現となってしまいましたが、血管の傷は浅いものであれば、つまり早め早めに血圧をうまくコントロールすれば、そういった最悪な事態の可能性をぐっと下げることができます。

 

高血圧の症状には「頭痛・めまい・耳鳴り」などがあり、医療機関に受診してみたら高血圧が発覚するというパターンがあります。ただいやらしいことに、自覚症状がなく突然脳卒中や心筋梗塞が起こってしまった方の割合は、決して少なくありません。2019年の厚生労働省による国民健康・栄養調査報告によれば、「予備軍以上の高血圧を有しながらも血圧を下げる薬を飲んでいない未治療の人口割合」は40歳以上の男性では約50.3%、女性では約37.5%とも報告されています。その中で今も自覚症状なく過ごされている方々については、きちんと検診をお受け頂くことで、傷が浅いうちに高血圧の病魔を遠ざけることができます。

 

備えあれば憂いなし、とは、まさにこのことです。

 

検診はまずぜひ、主に市町村や職場による一般的な検診からお受けしてみて下さい。それ以外に当院では、相模原市による検診に加えて、いつでも健診をお受け頂ける人間ドックセンターも備えておりますし、「たまたまホームセンターで血圧を測ってみたら、高かった…そういえば昔、糖尿の気があるとも言われていたっけ…?」というようなご相談でもお気軽に、普段の内科外来でお承りしております。

 

治療には投薬による薬物療法以外にも、運動療法やうまく減塩を取り入れた栄養指導など、専門の栄養士なども加わった多職種での患者様に合わせた総合的なプランをじっくりと吟味して提案いたしますので、どうぞご安心下さい。

 

今後も地域の皆様にご安心してご相談頂けるパートナーとして、日々研鑽して参ります。