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BLOG第204回 「血圧はどのくらいに下げればよいのか?」

2023.09.15

「血圧はどのくらいに下げればよいのか?」

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆さま、こんにちは。
腎臓内科医師の石出崇でございます。

 

前回のブログでは、高血圧症自体のイメージや、どんな病気の原因になりうるのかをご紹介しました。そこでは、

  • 高血圧症が全身の血管を傷つけてしまうこと
  • もし糖尿病や脂質異常症などの合併症があると、傷が更に輪をかけて広がり動脈硬化となること
  • その結果として脳卒中や心筋梗塞、腎臓病につながってしまうこと
  • 症状が現れにくいため、抱えていながらも治療を受けていない方が多いこと

以上をガイドラインなど交えて、ご紹介いたしました。

 

今回は、個々の患者様に応じて血圧はどのくらいに下げればよいのか、をご紹介いたします。

 

「高血圧って140/90mmHg以上が診断基準だから、それ以下なら良いですよね?」と、患者様から率直なご意見を頂くことがございます。
本邦における多くの疫学調査を総合した2019年日本高血圧学会のガイドラインからは、以下のような数値目標が出されております。
高血圧
出典元:高血圧治療ガイドライン2019

 

この表からお分かり頂けます通り、細かく数字が割り振られてはいても、実際には「130/80mmHg未満」を目指している患者様が割と多めでございます。ここで、「たった10mmHgしか違わないのに、そこまでこだわる必要があるのか…?」と、思われるかもしれません。

 

しかし、前回のブログでご紹介した通り、「160mmHgの血圧で血液を約2mの高さに噴き上げることができる」と言われております。この「10mmHg」という数字も侮るなかれ、実際に計算して例えてみると,「ひろげた両手の上に、約1.36㎏の重りを乗っけられる」ことと同じであり、実際に想像してみるとなかなか違うことがわかりますね。
(計算式は、公式では1mmHg≒1.36gw/cm2で、広げた両手を10㎝×10㎝=100㎝2と仮定して、10mmHg≒1.36kgw/100㎝2です。)

 

実際に「130/80未満」という数値自体も、日本のみならず世界各国の数多くの臨床研究を総合して、「高血圧の患者様方うち約130/80mmHg未満の血圧に厳格にコントロールされていた方々が、コントロールされていなかった方々と比較して脳や心疾患の発症率を下げられていた」という根拠から設定されております。

 

患者様にはせっかくご足労をお掛けしご来院頂いているので、治療するならば、多くの研究結果を経て磨き抜かれた良い数字を目指したいものです。

 

もちろん、字面だけを見て、急いで無理に帳尻合わせしようとして、強い降圧薬を服用することがいいこととは限りません。急な血圧低下によって、立ち眩みや転倒を招くことや、血圧の本来の機能である腎臓・脳などの重要な臓器の循環を妨げてしまうことがあり、それは血圧を管理して健康に過ごすことの目的からそれてしまい、本末転倒となってしまいます。内科外来では、個々の患者様における普段の血圧推移やライフスタイル(立ち仕事のため立ちくらみに特に注意しなければいけない方なのかetc…)に沿って,処方投薬のみならず運動・栄養指導をまず優先すべきかも含めて総合的に判断したうえで、処方する前に良くご相談と同意を頂くステップを踏むことを、一医師として肝に銘じております。

 

当院内科外来では、お帰りになる前に栄養指導をお受け頂ける専門の栄養士が常に待機いたしております。もしその日に空き枠がございましたら勿論お受け頂けますので、是非お気軽にご利用してみて下さい。