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BLOG第22回 腹膜透析(PD)が日本で普及しない理由③

2020.07.27

腹膜透析(PD)が日本で普及しない理由③

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、こんにちは、院長です。

 

今回は、腹膜透析が日本で普及しない理由についての最終回です。

 

  1. 血液透析の施設が多く、通院先の選択肢が多い一方で、腹膜透析を実施できる医療機関、医療スタッフが限られている。
  2. 糖尿病性腎症(糖尿病に合併した慢性腎不全)の患者さんには不向きと考えられる。
  3. ご高齢の方の導入に抵抗感がある。

12は既に以前のブログで説明しておりますので、今回は3について説明していこうと思います。

腹膜透析(PD)が日本で普及しない理由①

腹膜透析(PD)が日本で普及しない理由②

 

3 ご高齢の方の導入に抵抗感がある。

 

まず、わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)を改変して作成したこちらのデータをご覧ください。
全透析導入患者割合表腹膜透析患者割合表全国

参考元:わが国の慢性透析療法の現況(2018 年 12 月 31 日現在)

このデータをみると、全透析導入患者さんでは75歳以上の方々の割合が最も多くなっていますが、腹膜透析患者さんにおいては75歳以上の方の割合が少ないことがわかります。

 

この理由のひとつとしては、腹膜透析の手技習得がご高齢の方にとって難しいと考えられるので、医療従事者がはじめからご高齢の方に腹膜透析を導入することを敬遠しがちであることが考えられます。その一方で、ご高齢の方にとって腹膜透析は通院回数が月1回程度であることや、血圧の変動が少ないことなどから身体に優しいことなど多くの利点もあります(こちらをご参照ください 当院HP:腹膜透析について)。
実際に腹膜透析(PD)ラストという定義(一般社団法人 全国腎臓病協議会HP:PDファースト、PDラストとは)もあり、ご高齢であっても、腹膜透析の選択肢を残してご説明する必要があるかと考えます。

 

ここで当院に通院されている年齢別の腹膜透析患者様の割合をお示しします。
腹膜透析患者割合表当院

当院では45歳以上の全ての年齢層にほぼ同様の割合で腹膜透析をされている患者様がいらっしゃいます。80歳を超えられている方でもご自身でバック交換や消毒を問題なく行えており、短期の旅行を楽しんでいる方もいらっしゃいます。また、ご家族のサポートを受けながら、ご自宅で過ごす時間を増やすために腹膜透析を選択されたご高齢の方もいらっしゃいます。

 

このように、腹膜透析はご高齢であっても、選択肢から外すことなくご説明させていただき、患者様とご家族が納得される治療法を選んでいただけるように当院は努めております。

 

月一回の通院ですので、相模原市のみならず、隣接する町田市、大和市、座間市を含めた地域の方も当院で腹膜透析を受けていただくことが十分に可能です。引き続きよりよい腹膜透析療法を提供できる体制を整えて、地域の医療に貢献できるよう頑張ります。