CKDによるアシドーシスの治療について
森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。
先日野生のムササビを観察しに行ってきました。思っていたより人里に近いエリアに生息しており、そして思っていたより大きく、空を飛ぶ姿に感動しました。
さて、今回は慢性腎臓病(CKD)における合併症の一つである代謝性アシドーシスの治療についてのお話です。
Treating Metabolic Acidosis for CKD Progression? Need for Higher Quality Data
Clin J Am Soc Nephrol. 2025 Jan 1;20(1):147-149
代謝性アシドーシスは血液の重炭酸塩濃度が22 mEq/L未満である状態で、原因は多岐にわたりますが、CKDはそのひとつの原因です。腎臓の機能が低下した際に、酸と塩基の調整を適切に行えなくなった結果として代謝性アシドーシスが生じ、CKDが進行するとより顕著になります。以前から代謝性アシドーシスは、腎機能がさらに低下すること、筋肉の機能が衰えること、そして心臓の収縮力低下や心拍数上昇をもたらす可能性があることなどが指摘されていました。このため、代謝性アシドーシスに対してアルカリ化剤で加療することが行われてきました。
代謝性アシドーシスの腎臓への直接的影響としては、腎臓内でアルドステロンやエンドセリンの分泌が増加し、これにより腎臓の間質の線維化が惹起され、腎機能障害がさらに進行していくことになります。また、代謝性アシドーシスに対して腎臓が酸性環境に適応しようとする過程でアンモニア生成を増加させ、その結果として、腎機能がさらに悪化することがあります。実際に代謝性アシドーシスは、推定糸球体濾過率(GFR)の低下と強い関連があることが報告されています。アシドーシスが進行すると、腎機能の低下が促進され、最終的には末期腎不全に進行するリスクが高まります。
治療としては重炭酸ナトリウムの服用によるアルカリ化を図ることが一般的です。ひとつの報告では、重炭酸ナトリウムが投与された患者では、GFRの低下が1.8 ml/min/yearであるのに対し、投与されなかった群では3.4 ml/min/yearも低下したという結果もあります。アルカリ化療法は、腎機能の維持以外にも、高カリウム血症の是正や筋機能の改善、骨密度向上などの利益をもたらす可能性もいわれています。これらの効果は、CKD患者の全体的な健康を保つためにも重要といえます。しかし、この重炭酸ナトリウムをはじめとするアルカリ化療法は、腎機能の改善に寄与する可能性がありますが、いまだに明確な結論には至っていないようです。特に、大規模な臨床試験が必要とされており、現時点ではその効果についての見解が分かれています。
代謝性アシドーシスの治療は未だに議論の余地があるため、今後さらなる質の高い研究が必要と考えられています。特に、血清重炭酸塩濃度の最適なレベルや、新しい治療方法についての理解は十分ではないため、今後の大規模で信頼性の高い実験デザインに基づいた試験や、治療方法の多様性としてミネラルアルカリや酸を結合する非吸収性吸着薬の使用も含め、様々な治療法の効果を評価することが重要となります。
代謝性アシドーシスの治療がCKDの進行にどのように影響するかについては、現時点ではどの程度治療すべきか、どの薬剤が最適なのか、など明確な結論が出ていないものの、アルカリ化療法には一定の効果があるのではないかと考えます。今後のさらなる研究で、より効果的な治療法が見いだされ、CKD患者さんのQOLを向上させるための手助けになることを期待しています。






