お知らせ一覧

BLOG第64回 ペットと共に健康な生活

2021.01.14

ペットと共に健康な生活

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

このブログを読んでくださっている方の中にも、ペットを飼っている方は結構いらっしゃるのではないかと思います。我が家ではフレンチブルドックの女の子(ぽてと 1歳10か月)が暮らしていますが、毎日とても癒されています。帰宅して、ぽてとが『おかえり~!』と飛び跳ねてきてくれると一日の疲れが吹っ飛びます。

 

ところでペットを飼うと心が豊かになるだけでなく、健康にも良い可能性があることはご存じでしょうか?

 

今回は、身近な存在である犬と飼い主の健康の関係についての大規模な臨床研究をご紹介します。
Mubanga M, Byberg L, Nowak C, Egenvall A, Magnusson PK, Ingelsson E, Fall T. Dog ownership and the risk of cardiovascular disease and death – a nationwide cohort study. Sci Rep. 2017 Nov 17;7(1):15821. doi: 10.1038/s41598-017-16118-6. PMID: 29150678; PMCID: PMC5693989.

 

これまでも、いくつかの研究で犬を飼うことと死亡率の調査が行われていましたが、この研究の強みはそれまでの研究とは比にならない対象者の数であることです。

 

スウェーデンで行われた約340万人のデータを抽出したこの研究によると、犬を飼っていない方と比べて、犬を飼っているすべての世帯の方であらゆる原因での死亡リスクが低く、さらには、犬を飼っている一人世帯の方では心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞、心不全など)のリスクが顕著に低いという結果でした。
具体的には、犬を飼っている1人世帯の群では、犬を飼っていない群と比べて死亡リスクが33%、心血管疾患に関連する死亡のリスクが36%低くなっていました。さらに、犬を飼っている複数人の家族がいる世帯では、犬を飼っていない群と比べて死亡リスクは11%、心血管疾患に関する死亡のリスクは15%低くなっていたという結果でした。

 

犬を飼うことでの死亡率低下の理由としていくつかの要因が考察されています。

  • 社会的孤立、うつ病、孤独などの心理社会的ストレス要因の軽減
    心理社会的ストレスが、心血管疾患、およびすべての原因による死亡のリスクの増加に関連していることはすでに多くの研究で報告されています。そして、これらのストレスは犬の飼い主では低いことがいくつかの研究でこれまでに報告されています。
  • 副交感神経系の活性と交感神経系の抑制
    犬と触れることで、リラックスしたときに亢進する副交感神経が活性化され、興奮したときに上昇する交感神経系が抑制されることが示されています。また、ストレスに対する反応性も低下することが報告されています。
  • 運動量の増加
    心理的側面に加えて、身体的にも犬を飼うことのメリットがあります。飼い主はより多くの時間を屋外で費やし、身体活動が増えることは明らかです。さらには、飼い主が病気で入院した場合にも、犬と散歩に行くことをモチベーションとしてリハビリテーションに励むことが出来ることも示唆されています。(一方で、この研究での注意点として、犬を飼おうとする方々はそもそも健康問題が少なく、身体的活動度が高い可能性があることは結果を解釈するうえで注意が必要であることも述べられています。)

 

 

今回の新型コロナ感染拡大での自粛傾向で、犬を含めたペットの需要が高まっているそうです。確かに自粛生活において、私自身も犬の存在意義の大きさを実感する日々です。愛犬“ぽてと”と共に、精神的にも身体的にも健康であり続け、患者様、病院のために今年も頑張っていこうと思います。