透析をされている方の体の水分量をどのように評価するか
森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆さま、
こんにちは、院長です。
先日、アジを釣りに行きました。家族で30匹ほど釣れ喜びましたが、帰ってから夕飯までに急いで捌くのが大変でした。
しかし、その甲斐あってとても美味しいアジフライを作ることが出来ました。
当院が注力している腎臓、その大切な役割の一つは、体の中の水分や塩分のバランスを保つことですが、血液透析・腹膜透析の治療ではその調整を機械や透析方法に委ねることになります。そのため、水分の過不足は、透析患者さんの体調や生活の質に大きく影響します。日々の診療で患者さんの体の水分量(体液量)の評価を、むくみなどの身体的表現、血圧などのバイタルサイン、レントゲンなどによる画像、採血による数値などを総合的に評価しています。しかし、ある評価では体液量が少ないように見える一方で、別の評価では多いように見えることもあり、どこに重点を置いて判断すべきか悩む場面も少なくありません。体液量を絶対的に客観評価することは、実際には難しいことも多いのです。
今回は、透析患者さんにとって非常に重要なテーマである「体の水分量(体液量)をどのように評価するか」についてまとめられた、アメリカ腎臓学会誌の総説論文をご紹介します。
この論文は、長期に透析(血液透析・腹膜透析)を受けている患者さんにおいて、体に水分が多すぎる状態、あるいは少なすぎる状態をどのように評価し、管理していくべきかを整理したものです。また、論文では主に血液透析の研究データを多く紹介していますが、水分管理の考え方そのものは、腹膜透析と血液透析のどちらにも共通する内容であり、日常診療にそのまま応用できる視点が多く含まれています。前述したように体液量の評価は、透析医療の質を左右する非常に重要な要素であるにもかかわらず、実は「これが絶対に正しい」という方法は確立されていないことが現状であることがこの総説の背景にあります。
水分が体にたまりすぎると、血圧が上がったり、心臓に負担がかかったり、息切れやむくみが出る原因になります。一方で、水分を引きすぎると、透析中の血圧低下や筋肉のつり、残っている腎臓の働きが早く失われてしまう可能性もあります。つまり、「多すぎても、少なすぎても良くない」という非常に繊細な調整が必要になります。
これまで、体重の変化や血圧、足のむくみ、首の血管の張り具合といった身体所見が、水分状態を判断する手がかりとして使われてきました。しかし、この論文では、こうした方法はいずれも簡便である一方、正確さには限界があり、医療者による判断のばらつきも大きいことが指摘されています。体重の変化も、栄養状態や筋肉量の変化が影響するため、必ずしも水分量だけを反映しているとは限りません。例えば同じ患者さんにおいて同じ50㎏であっても、夏の暑い時期に食欲が低下して食事量や運動量が低下した日々を送っているときと、涼しくなって活動量が増え、食事摂取も増えた日々を送っているタイミングでは筋肉量や脂肪量の差があるため、同じ50㎏でも体液量は異なります。
近年注目されている方法として、肺エコーや体組成計(生体インピーダンス法)を用いた水分評価があります。肺エコーでは、肺に余分な水分がたまっているサインを確認することができ、体組成計では体の中の水分分布を推定することが可能です。これらの方法は、科学的な裏付けがあり、水分過剰と予後との関連も示されていますが、論文では「これらを使えば必ず予後が良くなる」と言えるほどの十分な証拠は、現時点では示されていないとまとめられています。
この総説で特に強調されているのは、「新しい機器を使うこと」そのものよりも、「水分状態を定期的に見直し、患者さん一人ひとりの状態や生活背景を踏まえて調整していくこと」の重要性です。画一的な目標体重を設定するのではなく、症状の有無や日常生活での困りごと、残っている腎臓の働きなどを総合的に考える必要があると述べられています。
この論文を通じて患者さんにお伝えしたいのは、水分管理がうまくいかないと感じたとき、それは決して珍しいことではなく、透析医療全体の中でも「まだ答えが完全に出ていない難しい問題」であるということです。そのため、体重や血圧の数字だけで一喜一憂するのではなく、体調の変化やつらさを医療スタッフに伝えていただくことがとても大切になります。
森下記念病院では、体重や血圧、画像や採血結果だけに頼らず、患者さんの症状や生活の質、残存腎機能なども含めて総合的に評価しながら、水分管理を行っています。また、前述した体組成測定(生体インピーダンス法)も行っております。
透析がつらい、むくみや息切れが気になる、透析中の血圧低下が心配といったことがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。
今後も最新の知見を取り入れながら、患者さんが安心して治療を続けられるよう支援してまいります。







