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BLOG第3回 新型コロナウイルス感染拡大で懸念される医療崩壊について

2020.04.23

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、こんにちは、院長です。

 

今回は新型コロナウイルス感染拡大で懸念される医療崩壊について、当院の体制を含めてコメントさせて頂きます。

 

医療崩壊とは「安定的・継続的な医療提供体制が成り立たなくなる」状況のことで、今回の新型コロナウイルス感染症に関しては医療を提供するために必要な人や物資が絶対的に不足することを指します。それでは医療崩壊が起こるとどうなるのでしょうか?

 

①感染者用の病床が足りなくなる

  指定感染症に指定された新型コロナウイルス感染症は 5 段階のうち二類感染症として扱われています。本来、指定感染症に感染した患者は感染症指定医療機関にある感染症病床へ入院しますが、平成31年4月1日時点で条件を満たす病床数は全国で 1,800 床ほどしかありません。国が主導となって一般病床でも新型コロナウイルス感染症患者を受け入れができるような体制の調整を始めていますが、日本医師会総合研究機構が算出した東京都のみのピーク時予測感染者数 (入院患者) である約 20,000 人には及んでいません。また、人口あたりの重症患者を受け入れる集中治療室 (Intensive Care Unit: ICU) の数も欧米に比べ少なく全国で 6,500 床程度であり、ピーク時にはこの数を超える重症患者が出るおそれがあります。軽症者であれば指定されたホテルで療養するという試みも既に始まっています。

 

②医療機器が足りなくなる

  新型コロナウイルス感染症は呼吸器感染症であり、自力で十分な酸素を取り込めなくなった場合に人工呼吸器を使用することがあります。この人工呼吸器の数が世界的に不足しており、医療機器メーカーだけでなく、自動車や重工業メーカーも製造に着手しています。また、人工呼吸器では対応できなくなった場合、肺でのガス交換を介さずに血液中へ直接酸素を供給し二酸化炭素を除去する人工心肺装置を使用しますが、この装置も不足することが懸念され国内でも増産する見通しとなっています。

 

③医療従事者が足りなくなる

  新型コロナウイルスに感染した人や感染した疑いがある人は病院へ行きます。つまり、病院にいる医療従事者は新型コロナウイルスに感染するリスクが必然的に高くなります。そこで、医師や看護師をはじめとする医療従事者の多くが新型コロナウイルスに感染してしまうと十分な医療が提供できない、すなわち医療崩壊に陥ることになります。

 

④十分な治療が受けられないケースがでてくる

 イタリアなどの感染者の急激な増加を認めている国や地域では、実際に医療崩壊が起こってきています。その爆発的に増加する重症患者数に対して、集中治療を行うか・人工呼吸器を使用するかどうか判断するための倫理指針も出されています(Ezekiel J Emanuel et al., (2020) “Fair Allocation of Scarce Medical Resources in the Time of Covid-19” N. Engl. J. Med., In press. doi: 10.1056/NEJMsb2005114)。アメリカでもイタリアの事例に沿った治療方針に従っているのが現状です。今後、日本でも感染者数が増え続けると欧米のように命の選択をせざるを得ない状況がやってくるかもしれません。

 

それでは医療崩壊を防ぐために私たちにできることは何でしょうか。

①「外出自粛」の重要性

新型コロナウイルス感染症から自分を守るだけでなく、これ以上感染者数を増やさないためには外出は最低限にとどめることが重要となります。

 

②予防の意識を高めること

マスクは正しく着用する・手洗いうがいをする・不特定多数の方が触れる場所はこまめに消毒するなどを徹底すれば十分な予防効果が得られます。ちなみにマスクを着けるときは鼻から顎まできちんと覆い、鼻の形に合わせてワイヤーを折り、現在枯渇している資源を正しく、有効に使うことが大切です。

 

さいごに

この未知のウイルスには確固たる情報の蓄積がまだまだ不足しており、情報が錯綜し世界中が手探りで対応している状況です。このままの状況が続く限り、経済が停滞することで大きな損害が出ることは明白であり、自粛を続けるか、自粛を解除して経済を回すかの論争も聞かれ始めました。もちろん、このウイルスへの対応策に明確な答えがない以上は、今のところこの議論にも答えはありません。しかし、現在の緊急事態宣言が出ている現状においては、感染拡大防止に対してやれるべきことは徹底してやることに尽きるのではないかと思います。当院においても対応策(当院の新型コロナウイルス対策についてはこちら→https://www.morishita.or.jp/wp/info/2020/04/87)を徹底していきます。そして、現在当院では感染された方、感染を疑う症状の方の診察や治療は行っておりません。これは、国が調整を始めている感染者用の病床数確保の拡大ということに関しては協力できていないのが実情です。しかし、当院には腎機能が低下している患者様が多く、その中でも透析をされている方は通院を見合わすことはできません。透析を受けている患者様に感染した場合、重症化しやすいこと、そしてさらなる感染者の拡大が懸念されており、現在の限られた医療資源と病床数を圧迫してしまう可能性が高いと言えます。このことから、当院では新型コロナウイルス感染者の診療という直接的な協力はできませんが、感染者を、そして重症感染者を増やさないという側面で、医療崩壊に至らないように協力していきたいと考えております。