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BLOG第51回 絆の切断と食事

2020.11.09

絆の切断と食事

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは。放射線科です。

 

今回のテーマは、「災害」と「食事」について。

 

2011年の東日本大震災では、日本中の人々が自然の驚異を目の当たりにし、成す術もない無力さに打ちひしがれました。しかし、震災後にボランティアを始めとする人たちが、県を越え、国を越えて集い、つながりを強め新たな絆を作り上げていきました。不安と絶望を抱え、明日からの生活を心配する被災者たちが、全国から集まったボランティアの振舞う炊き出しで、どれだけ多くの笑顔を作り出したか知れません。

 

誰かが言っていましたが、「『生きている』『腹がふくれる』『笑顔になる』の三つがあれば人間なんとかなる!」と。これは、みんなで楽しく食事をすれば、笑顔になって生きる活力がわいてくると私は解釈しています。平時では余り気にしていなかった「みんなで食べる楽しい食事」は、コミュニケーションを重要視する人間社会特有のツールであり、人と人を結ぶ大切な絆なのでしょう。

 

地震、台風、津波、洪水といった自然災害は、建物やインフラに甚大な被害をもたらす物理的な破壊ですが、上記したように人々の心の中にある「他者への思いやり」をかきたて、絆を強める作用もあります。しかし、今回のCOVID-19は感染災害といわれるもの。人と人を切り離し孤立させ、人間社会そのものである絆を断ち切り、心の萎縮を促し相互扶助の気持ちを低下させる、精神的な破壊をもたらす極めて陰湿で怖い災害です。

今回の事態は、単に「今を我慢すれば元通りになる」というものではありません。これを契機に今までの私たちの社会のあり方を見直す必要があるのではないかと思います。

人間は、昔から食事を社会的手段として活用し、信頼できる人間関係を構築してきました。しかし、三蜜を避ける現状では既にそれは破綻し、更なる自粛を余儀なくされています。共に食卓を囲む仲間たち。それは家族であり、友人であり、恋人であり、職場の同僚たちです。

感染災害がもたらす最大の利点と言えば、「対面の食事の大切さ」を気付かせてくれたことかも知れません。そしてコロナが制圧収束され、再び食事の制約から解放されたときの喜び、仲間と共に食事を楽しめるといった幸福感を味わえることなのではないでしょうか。