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BLOG 第56回 慢性腎臓病(CKD)への当院の取り組み②

2020.12.07

慢性腎臓病(CKD)への当院の取り組み②
~CKD連携パスを用いた地域のかかりつけの先生方との連携~

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、こんにちは、院長です。

 

前回お伝えしたように、当院では以下の3つの柱でCKDに対して取り組んでおります。

①CKD保存期外来
②CKD連携パスを用いた地域のかかりつけの先生方との連携
③腎代替療法選択外来

 

今回は、②CKD連携パスを用いた地域のかかりつけの先生方との連携について解説していきます。

 

まずは、CKD診療にあたっては腎臓専門医の早期介入が重要となることを前回にもお伝えしていますが、その内容をこれまでのいくつかの報告を交えて少し詳しくお伝えします。

 

CKD対策の評価 -年齢調整透析導入率は低下したが、透析導入患者数減少は未達成― 若杉三奈子, 成田一衛. 日腎会誌 60: 41-49; 2018.

日本腎臓学会誌で紹介されているこちらの研究では、2002年に慢性腎臓病(CKD)が国際的に定義されたのち、2004年以降に日本腎臓学会発信のCKD対策が浸透してきていること、2008年に厚生労働省から「今後の腎疾患対策のあり方について」が発表されたことなど、全国的にCKD対策を進めてきた結果として新規透析導入者数が減少したかを調査しています。この結果、高齢化の要因があるため透析導入率は男性では横ばい(女性は減少)でしたが、年齢調整透析導入率は全体で低下傾向にあるという結果でした。これには病診連携によるCKDの早期発見・早期治療例の増加、CKD治療中断例の減少、生活習慣改善によるCKD進行抑制が導入率の低下に寄与していることが考察されています。

 

Longer duration of predialysis nephrological care is associated with improved long-term survival of dialysis patients. Jungers P, et al. Nephrol Dial Transplant 16: 2357-2364; 2001.

この研究ではフランスで透析導入となった1057人を対象に、透析導入前の腎臓専門医の通院期間を6か月未満、6か月から3年未満、3年から6年未満、6年以上の4つのグループで導入時の状態と導入後の生命予後を比較しています。結果は、透析導入時に血圧や貧血の管理は腎臓専門医への通院期間が長いグループで良好となっていました。さらに、腎臓専門医への通院期間が長いほど、緊急透析導入が少なく(→計画的な導入により身体的負担が少なく、入院期間が短い)、透析導入後3か月後、1年後、5年後の生命予後も良好という結果でした。

 

Ideal timing and predialysis nephrology care duration for dialysis initiation: from analysis of Japanese dialysis initiation survey. Yamagata K, et al. Ther Apher Dial 16: 54-62; 2012.

わが国で行われた研究のなかでも、腎臓専門医への紹介から透析導入までの期間と透析療法開始1年後の生存率の関連が調査されています。日本で透析導入した患者9,790人を対象として分析が行われ、様々な因子(併存疾患など)を考慮しても、透析導入に至る6か月以上前に腎臓専門医に紹介された患者のグループで、有意に生命予後が良好でした。

 

これらの結果から、CKD進行抑止は勿論のこと透析導入後の生命予後改善のため、早期から腎臓専門医による教育的介入の意味を含めてなるべく早めの段階から、かかりつけのクリニック等での診察に併せて腎臓専門医の診察を受けることが望ましい、ということがわかるかと思います。さらに付け加えると、早期腎専門医の介入は、透析導入後のQOL(Quolity of Life)や精神健康度の上昇にも関わっていることが報告されています。

 

当院では、かかりつけの先生方からの紹介の過程がなるべくスムーズかつ煩雑にならないように、そしてご紹介後にどのようなスタイルで連携して患者様を診察していくかの方針をたてやすいようにCKD連携パスを作成しました。

 

これは従来の情報提供書(紹介状)とは少し異なり、現在の状態確認や合併疾患、併診形式の希望などをチェック項目や決められた書式を用いて、よりスムーズに患者様を腎臓専門医擁する当院とかかりつけの先生方が連携をとれるように工夫したものになっております。地域の開業医の先生方や腎臓専門医を擁さない医療機関にお配りをし、またホームページ上からダウンロードして印刷していただくことも可能になっています。

 

当院では腎臓専門医の常勤3名(+非常勤1名)体制で、月曜日から土曜日まで当院の診療時間内であれば、いつでも紹介受診が可能です。CKDを抱える患者様にとって、よりよい人生を送っていただくことが出来るように、お気軽にご紹介、ご相談をお待ちしております。