慢性腎臓病(CKD)進展予防の取り組み かかりつけ医の地域連携
森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。
まだまだ暑い日が続いています。
自分も含めて運動不足にならないように犬の散歩を続けていますが、朝6時の散歩でも我が家の愛犬は10分で歩くことをあきらめて、抱っこして帰宅することもあります。ちなみに我が家の犬は鼻ぺちゃと称される部類に属しており、暑さに弱い犬種です。
暑さは嫌いではないですが、もう少し朝晩は涼しくなってほしいですね。
本日は慢性腎臓病(CKD)に対するわが国の対策と、診療連携についてのお話です。
CKDは新たな国民病とも称されており、その罹患率は成人の8人に1人に上ることが推定されております。
CKDは透析や腎移植が必要となる末期腎不全や、心臓や脳の血管の病気の原因となるため、早期発見と早期治療が重要であることは明白となっております。
日本においては、その対策として2018年に厚生労働省から腎疾患対策検討会報告書という指針が発行されています。
この報告書では、全体目標として、CKDを早期に発見・診断し、良質で適切な医療を早期から実施・継続することにより、CKD重症化予防を徹底するとともに、CKD患者(透析患者および腎移植患者を含む)さんの生活の質の向上を図ることが記されています。
そして達成すべき目標として、地域におけるCKD診療体制を充実させることや、新規透析患者数の減少が挙げられています。
そのために実施すべき取り組みとして、CKDの普及啓発、医療連携体制(かかりつけ医と腎臓専門医の2人主治医制)、診療水準の向上、人材育成、研究の推進が掲げられています。
この取り組みですが、全国的に万事がすべてうまく進んでいるとは言い難い状況のようです。とくに、2020年から発生した新型コロナウイルス感染の影響は大きく、地域の自治体レベルで連携が十分にとれない状況となっていました。そのようななか、当院が位置する相模原市においては、感染が落ち着いてきた(少し落ち着いた)状況下で、私も何回か参加し討論を行いましたが、行政(保健所)や医師会を交えた話し合いが行われています。相模原市全体レベルで進めることも難しいため、区などの比較的小さなエリアに区切っての診療連携を進めていくことなどが話し合われています。また、当院は大和市や町田市に近い位置にあるため、町田市の医師会の学術講演会や、大和市の医療機関のスタッフの方々を対象とした講演会などで、僭越ながらお話をさせていただく機会をいただき、CKDに関する内容や、患者様にとってもメリットのある連携(2人主治医制)や、いかに生活の質を向上させるかという内容をお話しています。
現在厚生労働省からは腎臓専門医・専門医療機関への紹介の基準として、下記の項目が示されています。
- 尿蛋白(+)
- 尿蛋白(+/-)かつ血尿(+)
- eGFR<45ml/分/1.73m2 40歳未満または尿蛋白(+/-)以上ならば<60ml/分/1.73m2
そして、紹介をいただいただいた際に腎臓専門医、医療機関で出来ることとして、
- 尿検査異常や腎機能障害の原因の精査(腎生検を含めて)
- かかりつけ医との2人主治医制による保存期腎不全の適切な管理
- 適切な腎代替療法(腎移植・腹膜透析・血液透析)の導入
- 看護師・管理栄養士・薬剤師・理学療法士などの腎臓専門医療従事者による生活指導
が挙げられます。これらの介入により、CKDが進行することを予防し、また合併症を予防して患者様にとってよい生活を維持できるように努めます。
ちなみに2人主治医制といっても、2つの医療機関を頻回に受診されることは患者様にとってもご負担となるため、安定している、もしくは軽度であれば、腎臓専門医療機関への通院は半年や1年ごとでも管理できうることもあります。
当院は腎臓専門医が5人常勤として勤務している専門医療機関であり、CKD、腎疾患に対応すべく充実した診療体制を整えております。地域によっては腎生検まで対応可能な腎臓専門の医療機関は充実しているとはいえないこともあります。当院ではこれからも、相模原市、町田市、大和市など近隣の地域においてCKD診療、進行予防に貢献できるように努めてまいります。