慢性腎臓病(CKD)進展予防の取り組み 多職種の連携の意義
森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。
今回は前回のブログ(慢性腎臓病(CKD)進展予防の取り組み かかりつけ医の地域連携)に続いて、
多職種が介入しCKD進行予防を行っていく意義についてお話します。
→ BLOG第回 慢性腎臓病(CKD)進展予防の取り組み かかりつけ医の地域連携
新たな国民病とも称されるCKDへの対策として、進行を予防するためにかかりつけ医と専門医の連携が重要であることを前回お話しました。そして専門医療機関を受診された際には、その後のCKD管理として看護師、管理栄養士、薬剤師などのチーム医療により、包括的に患者さんの指導を行いながら、生活習慣を改善してCKD重症化を予防することが重要となります。
実際にCKD診療における多職種連携により、CKD進行率やCKDに関する指標が改善したとされる論文の報告が、国内外を合わせても増えてきています。1年後のeGFR(CKDのステージの指標)変化、透析導入率、全死亡率が多職種介入で非介入群よりすぐれていたこと(1)、多職種連携によりCKD患者さんの腎予後、受診継続率、血糖管理や体重管理が改善されたこと(2)、多職種介入により尿蛋白が減少(尿蛋白が多いとCKDが進行しやすくなるため、尿蛋白をいかに抑えるかが重要なため)したこと(3)などが報告されています。
“多職種”には看護師、管理栄養士、薬剤師などが含まれますが、より有効なCKD診療に寄与できうる腎臓病療養指導士という資格があります。これは、前述したそれぞれの職種が取得できるもので、CKDの正しい知識を有し、患者さんの生活の質や生命予後の向上を目的として、腎臓専門医や関わる医療従事者との連携を取りながら包括的な療養生活と生活習慣の指導を行い、CKDの進行予防を行う役割を担っています。それぞれの視点から生活指導や服薬指導、栄養指導を行いながら、腎臓専門医も含めたチームに、患者さんも取り込みながら自己管理能力の向上を目指し、腎臓病の進展を予防し良い生活を維持できるようにしていきます。
当院は腎臓専門医が5人常勤として勤務している専門医療機関であることに加えて、腎臓病療養指導士も2名在籍し、これから取得のために準備をしているスタッフもおります。引き続き、CKD早期発見、治療、進行予防により、地域医療に貢献してまいります。
また腎臓病療養指導士や、CKDに関わるスタッフにとって、当院はCKDの初期から、腎代替療法選択外来、腹膜透析・血液透析の導入、維持透析管理を一貫して診療しており、患者様のCKD診療に寄り添いながら、長きにわたり治療を提供することが出来る施設です。もしご興味のあるスタッフの方がいらしたら、いつでもお待ちしています。
(1)Multidisciplinary predialysis education decreases the incidence of dialysis and reduces mortality—a controlled cohort study based on the NKF/DOQI guidelines. Nephrol Dial Transplant 2009; 24: 3426-33
(2)Effect of behavior modification on outcome in early-to moderate-stage chronic kidney disease. PLoS ONE 2016; 11: e0151422
(3)Effectiveness and current status of multidisciplinary care for patients with chronic kidney disease in Japan: a nationwide multicenter cohort study. Clin Exp Nephrol 2023; 27: 528-41