骨粗鬆症は骨折だけではない!実は生命予後にも影響!? ②
~コロナ禍の外出自粛の影響で、骨が弱くなっていませんか~
森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは!放射線課です。
前回のブログに続き、今回は「骨粗鬆症が生命予後に与える影響」をテーマにお話しさせていただきます。
→BLOG第回 骨粗鬆症は骨折だけではない!実は生命予後にも影響!? ① ~コロナ禍の外出自粛の影響で、骨が弱くなっていませんか~
≪骨粗鬆症は骨折だけではない!実は生命予後にも影響!?≫
骨粗鬆症は、意外にも生命予後に影響する病気です。
骨粗鬆症が生命予後に影響に与えるものとして、下記のようなものがあります。
- 骨折のリスク増加
骨粗鬆症による骨折は、特に高齢者において重大な健康問題を引き起こします。骨折後の回復には時間がかかり、長期間の入院やリハビリが必要になることがあります。
・大腿骨近位部(股関節骨折)
特に高齢者で多く、骨折により長期間歩くことができなくなり、長期にわたる寝たきり状態や手術に伴うリスク、感染症や心肺機能の低下などの要因で骨折後の1年以内の死亡率も低くありません。
・椎体骨折
直接的な致死率は低いものの、背中や腰の痛みから寝込みがちになり、生活の質の低下や他の健康リスクの増大につながります。これにより、生活の質が低下し、間接的に生命予後に影響を与える可能性があります。 - 生活の質の低下
骨折やそれに伴う痛み、身体的な制約は、生活の質を著しく低下させます。日常生活での自立が困難になり、介護が必要となる場合もあります。 - 合併症のリスク
骨折後の長期臥床や活動制限は、肺炎や深部静脈血栓症などの合併症を引き起こしやすくなります。
これらの合併症は骨折後の死亡率を上昇させ、命に関わることもあります。
大腿骨頸部骨折後の5年生存率は、報告によって異なりますが、65歳以上の高齢者が大腿骨近位部骨折の場合63.5%との報告があります1)。
別の報告ですが、65歳以上の高齢者の方が太ももの骨を折った場合、1年以内の死亡率は10~30%というデータもあります2)。
また、最新のがん5年生存率は66.2%(2014~2015年診断例)。がん以外の病気や事故など全ての死亡を含めた生存率である実測生存率60.3%です3)。
つまり、単純比較はできませんが、大腿骨近位部骨折の5年生存率はがんと診断された方とほぼ同等ということになります。
大腿骨近位部骨折の要因となる骨粗鬆症は、非常に注意すべき病気であることがわかると思います。
≪まとめ≫
最後にまとめとなりますが、コロナ禍の外出自粛の影響で骨粗鬆症が多くなっていることが示唆されています。
骨粗鬆症の増加から骨折、その後寝たきりにつながってしまうことに懸念されます。
「活動低下による骨密度の低下」
→ 「骨粗鬆症」
→ 「転倒・骨折」
→ 「寝たきり」
まずは、骨粗鬆症の早期発見と予防が非常に重要です。
骨密度の健診は、骨粗鬆症の早期発見と予防に非常に重要で、特にリスクが高い人々にとって定期的な骨密度測定は健康管理の一環として強く推奨されます。
早期発見し、時間がかかりますが適切な治療と生活習慣の改善により、骨密度を改善し骨折のリスクを減少させることが可能です。
そして高齢者の健康寿命および生命予後を改善することにつながります。
骨密度検査には様々な方式がありますが、腰椎・大腿部近位での測定が重要になります。
コロナ渦でしっかり活動自粛された方、このブログで少しでも自分の骨密度が気になった方。
検査は10分程度で、痛みもなく食事制限もありません。
一度、骨密度の検査を行ってみてはいかがでしょうか。
推奨される対象者
以下の人々は、定期的な骨密度健診を受けることが推奨されます。
- 閉経後の女性 :閉経後はエストロゲンの減少により、骨密度が急速に低下することが多い
- 50歳以上の男性 :男性も加齢に伴い骨密度が低下する
- 家族歴がある人 :親や兄弟に骨粗鬆症や骨折の既往がある場合、遺伝的要因によりリスクが高まる
- 長期間のステロイド使用者 :ステロイド薬の長期間使用は骨密度を低下させる可能性がある
- 低体重の人 :体重が軽い人は骨密度が低い傾向にある
- 特定の病歴がある人 :リウマチ、甲状腺機能亢進症、クローン病などの慢性疾患がある方は骨密度の低下リスクが高い
≪参考資料≫
1)金丸由美子・西村誠介ほか「65歳以上の大腿骨近位部骨折手術症例の生命予後および予後因子の検討」(2010)
2)日本整形外科学科・日本骨折治癒学会「大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン(改定第3版)」(2021)
3)国立がん研究センター「がん情報サービス」