健診 オプション検査「胸部ヘリカルCT」とは
森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは!放射線課です。
先日の「BLOG第359回 自分の合ったオプション検査を追加してみませんか。」にて、放射線課の検査である「胸部ヘリカルCT」が第5位にランキングされました。
そこで、今回は健康診断・人間ドックのオプション検査として行われている「胸部ヘリカルCT」について、お話させていただきます。
- どのような事がわかるのか?
- 通常のCT検査とは違うのか? などなど
≪肺がんの現状≫
まず、この検査目的としては、肺や気道、心臓、血管、リンパ節など胸部の内部構造を詳しく見るための検査であり、主に肺がんの早期発見を目的として行われます。
肺がんは、国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、がんの中で最も死亡数が多くなっています(男性:第1位、女性:大腸がんに続いて第2位)。2023年データでは年間死亡数は75,762人(男性52,908人、女性22,854人)となっています。
がん死亡数の順位(2023年)
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1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
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男女計 |
肺 |
大腸 |
膵臓 |
胃 |
肝臓 |
大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
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男性 |
肺 |
大腸 |
胃 |
膵臓 |
肝臓 |
大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
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女性 |
大腸 |
肺 |
膵臓 |
乳房 |
胃 |
大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸10位 |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)
初期には自覚症状もないことが多く、進行した状態で見つかることが多い疾患です。
この状況を改善するために、肺がんを早期に発見する様々な検査が行われています。
≪肺がん検診≫
肺がん検診として、現在 胸部X線検査(+喀痰検査)、胸部CT検査 が行われています。
胸部X線検査が最も多く行われていますが、X線を1方向から撮影し、肺全体を1枚の平面画像で観察します。そのため、心臓や骨などの臓器との重なりで判断しづらいことがある点や、小さな病変は見えにくい点が欠点となります。
胸部CT検査は、複数方向からX線を撮影し、コンピュータで作成する輪切り画像です。画像は5mm以下の厚さで複数画像かつ様々な方向で観察可能で、他の臓器と重なりもなく、小さな病変も検出しやすい高精度な検査が可能です。

胸部X線検査で指摘できる肺がんは、2~3cm以上で1cm以下の肺がんを指摘することは困難といわれていますが、胸部CT検査では数mmの病変でも指摘が可能です。
しかし、X線検査と比較し、胸部CT検査は放射線被曝が多いことが欠点でした。
そこで、肺がん検診に特化し、通常のCT検査より放射線被曝を大幅に落とした「低線量CT検査」が近年注目されてきています。
≪低線量CT検査≫
低線量CT検査では、放射線被曝線量を減らすため、撮影する際の放射線量を大幅に落とし検査を行います(通常CT検査の約1/6以下の被曝線量)。画像の質は通常のCT検査に比べて劣りますが、肺にある陰影の存在の有無は十分に判断可能です。肺以外に存在する異常については、通常線量を用いる検査と比較して見つかりにくい場合があります。つまり、低線量肺がんCT検診は「肺がんを見つけるための検査」とご理解いただければと思います。
検査精度に関しても、米国NLST(National Lung Screening Trial)試験や欧州NELSON(The Dutch-Belgian Lung Cancer Screening Trial)試験の大規模な臨床試験で、従来の胸部X線検査に比べ低線量胸部CT検査は、肺がんの発見率が約10倍高く、死亡率減少効果が約20%も良好であると示されています。

また、肺がん検診の最近のトピックスとして、18年ぶりに肺がん検診ガイドラインが改訂されました。
*国立がん研究センターがん対策研究所“有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版” 2025年4月25日公開
胸部X線・喀痰細胞診の併用法が推奨グレードD(対策型検診として推奨しない)になり、重喫煙者(喫煙指数600以上、対象年齢50〜74歳)に対しては、年1回の低線量CT検診が 推奨グレードA(対策型検診および任意型検診として推奨)とされました。

出典:国立がん研究センター「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2025年度版
今後も一般検診は胸部X線検査が基本となりますが、このガイドライン改定により、たばこを多く吸われる方の検診は、低線量胸部CT検査が主流になっていくのではないかと思います。
≪まとめ≫
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胸部X線検査 (レントゲン) |
胸部CT検査 |
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通常 |
低線量(検診) |
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画像 解像度 |
全体を1枚の平面画像で観察 |
数mmごとの輪切り画像(複数画像・様々な方向)で観察 |
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心臓や骨など、臓器の 重なりによる死角が多い |
心臓や骨など、臓器の 重なりによる死角がほとんどない |
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病変 検出率 |
2~3cm以上を検出可能 小さな病変は見逃しやすい |
数mmの病変や早期肺がんを検出可能 小さな病変も高確率で発見可能 |
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被曝量 |
約0.1mSv |
約6~8mSv |
約1~2mSv (通常CTの約1/6程度) |
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使用例 |
健康診断、スクリーニング |
精密検査、術前検査 |
健康診断(肺がんに特化) |
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臨床試験 結果 |
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レントゲンと比較し 肺がんの発見率:約10倍高い 肺がんの死亡率:約20%減少 |
当院のオプション検査「胸部ヘリカルCT」は、この「低線量胸部CT」になります。
このブログで少しでも自分の肺が気になった方。たばこを多く吸われる方・やめられない方。
検査は5分程度で、痛みもなく食事制限もありません。
一度、肺がんCT検診を受けてみてはいかがでしょうか。

森下記念病院 健康管理センター
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TEL:042-742-5222(健康管理センター直通)
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