SGLT2阻害薬は二刀流①
森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。
先日のブログで紹介しました畑仕事、先日はナスとピーマン、枝豆を収穫し美味しくいただきました。
自分たちで耕作から種まきという過程を経て、育て上げて、収穫したというバイアス(偏見)がかかっているのは
十分に承知していますが、スーパーで普段購入する野菜より、どれも甘くてみずみずしく、美味しく感じました。
さて、本日は慢性腎臓病に対して腎機能障害の進行を抑制することが知られ、日常の臨床でもひろく処方されているSGLT2阻害薬に関する話題です。
以前にもこのSGLT2阻害薬を紹介しましたが、今回もSGLT2阻害薬の論文の紹介です。
過去ブログ→ (BLOG第175回 SGLT2阻害薬の腎臓における機能についてのお話)
SGLT2阻害薬の腎臓における①血行動態を介する作用と②血行動態を介さない作用、の二刀流との表現で、
投打のスーパースターである大谷翔平にも例えられています。
国際腎臓学会の刊行誌であるKidney International誌に今年掲載された論文です。
Mechanisms of action of sglt2i: hemodynamics versus metabolic
SGLT2阻害薬は以前も紹介しました通り、もともとは血糖を下げるための薬でしたが、多くの臨床研究により、腎保護作用(慢性腎臓病:CKDの進行抑制)が確認されてきました。またその保護作用は、糖尿病によるCKDだけでなく、非糖尿病のCKDの患者さんにも有効であることが分かってきています。
SGLT2阻害薬には①血行動態の修正を介した腎保護作用、そして②血行動態とは関係のない腎保護作用の2つの重要なメカニズムが機能していることが考えられています。
まず①の血行動態を介する作用として分かりやすいのは、このSGLT2阻害薬を服用開始後にinitial decrease と称される初期の一時的なGFRの低下が起こることで説明されます。CKDの状態の腎臓においては、初期から中期にかけては過剰濾過という、言い換えると腎臓に過剰な負担がかかっている状態になっており、GFRと呼ばれる腎臓の濾過量、言い換えれば仕事量を維持しようとしています。さらに噛み砕くと、会社で短期的な業績(GFR)を維持するために必要以上の仕事を頑張って業績を維持しているような状態です。このような会社は短期的には業績を落とさず続けることが出来るかもしれませんが、中長期的には、社員は疲弊して業績が悪化してくることは目に見えているでしょう。SGLT2阻害薬はその過剰に仕事をしている状態を是正します。SGLT2阻害薬の腎における血行動態を修正する作用により、この過剰濾過が是正される結果として、服用開始初期にGFRが低下することをしばしば経験します。先ほどの会社の例でお話しすると、社員が目先の業績(GFR)ではなく、中長期的にある程度の業績を出し続けるために、現在の頑張り過ぎている状態をすこし嗜めると言ったような感じでしょうか。ちなみ細かな話になりますが、SGLT2阻害薬の血行動態への介入とは、腎臓の濾過装置である糸球体に入る輸入細動脈の過拡張を是正する働きです。
少々長くなってきたため、②の機能については次回のブログで紹介させていただきます。