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BLOG第308回 マグネシウムの話②

2024.12.16

マグネシウムの話②

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

今回は前回に引き続き、生物にとって重要な役割を担い必須ミネラルのひとつであるマグネシウムの話の続きです。
前回ブログ マグネシウムの話①
血中マグネシウム濃度が低下する低マグネシウム血症、増加する高マグネシウム血症について触れていきたいと思います。

 

血中のマグネシウム濃度が低下(不足)する低マグネシウム血症は、足がつることや身体のだるさ、食欲不振、気分の落ち込みや焦燥感、集中力の低下などの多岐にわたる症状が出るとされています。低マグネシウム血症の原因としては、消化管関連では経口摂取不足、腸管からの吸収不良、消化管分泌物による損失があり、短腸症候群や慢性下痢、膵炎などが挙げられます。また薬剤としては前述した胃薬の一つであるプロトンポンプ阻害薬の内服も腸管からの損失のひとつの原因となりえます。腎臓(尿)からのマグネシウム喪失としては、多くの場合は利尿薬や抗生剤、その他に抗がん剤や免疫抑制薬などの薬剤による原因が挙げられます。低マグネシウム血症の治療としてマグネシウムを含有する薬剤が考えられます。点滴による治療薬(マグネシウムの補充)は血中濃度を上昇させる一定の効果が望める一方で、内服薬でマグネシウムを含むものの多くは下剤であり、マグネシウムを上昇させる効果としては確立されたものではないようです。
最近になりCKDに対する腎保護作用として普及しているSGLT2阻害薬は、腎臓からのマグネシウム排泄率を低下させる可能性が考えられています。
(SGLT2阻害薬のCKDに対するトピックは、お時間があればこちらのページも読んでみてください)
BLOG第270回 SGLT2阻害薬は二刀流①
BLOG第271回 SGLT2阻害薬は二刀流②
その他には前述したマグネシウムを多く含む種実類や海藻類を摂取することも指導されます。

 

高マグネシウム血症は腎機能が正常な場合はほとんど起こることはありませんが、CKD・透析患者さんでは尿からのマグネシウム排泄機構が低下しており、下剤や制酸剤としてマグネシウム含有の薬剤を内服している方に起こることがあります。しかし、軽度の高マグネシウム血症であることが多く、透析をされている場合はマグネシウム濃度が調整されるため、程度が軽ければ影響は少ないと考えられます。一方で、血中マグネシウム濃度の高い値が継続する際にマグネシウム含有剤を服用しているようであれば、減量や変更が必要となります。またサプリなどで自覚なくマグネシウムを摂取している場合もあるため、注意することが必要です。

 

普段意識することが少ないマグネシウムですが、身体にとっては重要なミネラルのひとつであり、今回の話が少しでも役に立てれば幸いです。これから気温もさらに低下し、身体にとってはきつくなる季節ですが、体調を維持できるようにバランスのよい食事をこころがけていきましょう。