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BLOG第99回 睡眠時無呼吸症候群について ~②検査~

2021.10.21

睡眠時無呼吸症候群について ~②検査~

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

前回は睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)の病態についてご紹介しました。
今回はSASの検査について説明します。

 

・検査方法は2種類
SASを検査する方法は主に以下の2種類あります (1)。
①簡易検査
②ポリソムノグラフィー
これらの検査方法を使い分けることで、効率的にSASの診断や重症度の調べることができます。それでは、簡易検査とポリソムノグラフィーについてそれぞれ説明していきます。

 

①簡易検査
一般的に、SASの疑いがある場合には、後述するポリソムノグラフィーと呼ばれる詳細な検査を実施する前に、自宅でも比較的容易に実施できる簡易検査を行います (2)。簡易検査では呼吸の気流を測定するセンサー・いびき音を測定するマイクなどが装着されており、同時に酸素飽和度・脈拍数の変化も評価できます。気道の狭窄の程度や、低呼吸の有無を測定する睡眠評価装置により睡眠中の呼吸状態を検査します。ただし、脳波や筋電図、眼球運動を測定することができないため、レム睡眠やノンレム睡眠といったように詳細な睡眠状態や睡眠時間を正確に知ることができず、後述する無呼吸低呼吸指数(AHI: Apnea Hypopnea Index)を正確に評価できない可能性があります。

 

②ポリソムノグラフィー
続いて、簡易検査でSASの疑いと診断された時に実施するポリソムノグラフィーについて紹介します。ポリソムノグラフィー(別名:睡眠ポリグラフ検査)はSASの確定診断を下すときに実施する検査方法で、簡易検査と対比して精密検査と言われることもあります (3)。この検査は、夜間睡眠中の脳波・心電図・酸素飽和度・血圧・筋電図・眼球運動などを連続的に測定し、それを統合して評価します。簡易検査と異なり、医療従事者による検査準備が必要となるため、ポリソムノグラフィーを実施するときは基本的に入院が必要となります。また、ポリソムノグラフィーではSASの診断に重要な指標となるAHIを正確に評価することができます。このAHIとは「寝ている間1時間あたりに無呼吸や低呼吸が起こる回数」を指します。無呼吸は10秒以上呼吸が停止している状態で、低呼吸とは換気の明らかな低下と動脈血酸素飽和度が4%以上低下している状態が10秒以上続くことです。AHIが5以上でいびきや日中の眠気などの症状があればSASと診断され、重症度はAHIを指標として以下のように3段階に分かれています (4)。

軽度:AHIが5~15
中等度:AHIが15~30
重度:AHIが30以上

 

・一般的な検査の流れ
SASの一般的な検査から治療の流れは以下の通りです (2)。
①自覚症状や家族の指摘を受けて病院を受診
②問診の結果、SASの疑いがあれば簡易検査を実施
③簡易検査でAHIが40以上の場合は治療開始、40未満でも疑いがある場合はポリソムノグラフィーを実施
④ポリソムノグラフィーでAHIが5以上であればSASと診断
(確定診断にはポリソムノグラフィーを用いますが、簡易検査でも明らかにSASの症状が確認できる場合は、簡易検査実施後に治療を開始することがあります。)
⑤SASの重症度ごとに治療開始

 

当院において、①簡易検査(自宅での検査)から②ポリソムノグラフィー(一泊入院での精密検査)までの検査、および次回ご紹介するCPAP治療まで対応が可能です。気になる方がいらっしゃいましたら一度ご相談ください。

 

次回は、SASの治療方法についての詳細を紹介していきます。

 

【参考資料】
(1) 睡眠時無呼吸症候群 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
(2) 睡眠時無呼吸症候群~診断と治療~
(3) 睡眠時無呼吸症候群の診断と治療
(4) 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン