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STAFFBLOG 相模原市東林間 森下記念病院のスタッフによるブログです STAFFBLOG 相模原市東林間 森下記念病院のスタッフによるブログです

シャント閉塞を予防する可能性がある薬について

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

現在、我が家では、冬や春に採取してきた生き物たちが、順次夏に向けて成長を遂げています。ヤゴがトンボになり、カブトムシやクワガタの幼虫も蛹を経て成虫となり活動を始めています。

 

さて、今回は血液透析患者さんのシャントや人工血管(グラフト)など“バスキュラーアクセス”の血栓閉塞を予防する可能性のある薬についてのお話です。冒頭に述べておきますが、この薬は日本でも血栓予防としては広く使われていますが、まだ透析患者さんにおいては適応とはならない薬であることをご承知ください。
A randomized controlled trial evaluated the efficacy and safety of apixaban for prevention of recurrent thrombosis after thrombectomy of hemodialysis vascular access 
Kidney Int. 2025 Feb; 107(2):348-358

 

まず、この研究でバスキュラーアクセスの血栓予防に服用されているアピキサバンについて簡単に説明します。
出血したときなどに血液が凝固する過程において、Xaという因子は重要な役割を果たしており、プロトロンビンをトロンビンに変換することでフィブリンの生成を促進します。アピキサバンはこのXa因子を阻害することでトロンビンの生成を減少させ、フィブリンが形成されにくくなり、血液が固まること、すなわち血栓の形成を防ぎます。
冒頭でも述べた通り、日本では腎機能障害例での薬剤蓄積を理由に治験の段階で除外されていたためデータが不十分であり、高度腎機能障害例や透析患者さんには適応となっておりません。しかし、アピキサバンは主に肝臓で代謝され、未変化体の尿中排泄率は27%と報告されており、DOACと呼ばれるアピキサバンが属する血栓を予防するグループの薬のなかでは最も尿中排泄率が低く、腎機能障害時にも投与しやすい可能性のある薬剤であると考えられています。日本における透析患者さんにおける適応はまだありませんが、海外ではいくつかの地域で適応となっており、アメリカでは透析症例における同薬剤投与が健常人と比較してAUC(体内に取り込まれた薬の量を示す指標) が36%上昇したものの、最大血中濃度は上昇しなかったことに基づいて、2014年に透析患者におけるアピキサバンの使用が認められています。

 

バスキュラーアクセスの血栓症は血液透析患者さんにおいてしばしば経験される合併症であり、人工血管(グラフト)や内シャントの閉塞、透析効率の低下、および患者さんの予後不良につながることがあります。この論文の試験では、アピキサバンのバスキュラーアクセスの血栓予防としての有用性を調査しています。
具体的には、バスキュラーアクセスが血栓閉塞し治療として血栓除去が行われた後の再発性血栓症を予防するためのアピキサバンの有効性と安全性が評価されています。血管内血栓除去術後48時間以内にアピキサバン内服開始またはプラセボ薬内服開始の2つの群に割り当てられました。3ヶ月後、再発性アクセス血栓症の発生率はアピキサバンを服用していた群でプラセボ(服用していなかった)群と比較して有意に低い結果となりました。また、血栓を防ぐということは、合併症としては出血のリスクがあります。しかしこの研究では重篤な出血の合併症発生率は両グループで有意な違いはありませんでした(一方で軽度の出血イベントはアピキサバン群でより頻繁に見られました)。
これらの結果から、アピキサバンが血液透析患者における血栓切除後の血栓再発を効果的に減少させることが示唆されました。アピキサバンを使用することで、血栓の形成を防ぎ、シャントの通過性を維持する効果があることが考えられ、これにより、透析の効率が向上し、患者のQOL(生活の質)も改善される可能性があります。

 

ただし、繰り返しになりますが、日本ではまだ適応となっておらず、また適応となったとしてもアピキサバンの使用には出血リスクも伴うため、適切な患者選定や用量調整が重要と思われます。今後のさらなる研究で、長期的な安全性、効果の持続性、全体的な生存への影響を評価する必要があります。

 

現在のところ、日々の血液透析患者さんのバスキュラーアクセスの管理でこの薬は使えませんが、血圧の推移や浮腫やレントゲン結果をみながら適切な体液量を保つ、エコーで定期的に状態を観察する、針を刺す位置を考える、血管を過度に圧迫することや血流を途絶えるようなことを避ける、ことなど日々の管理で血栓閉塞を予防することは可能です。

 

当院では、私をはじめとして実際に透析室で血液透析管理を行うスタッフがバスキュラーアクセスの手術治療や日々の管理を行い、中長期的に安定してバスキュラーアクセスが使用継続できるような透析医療を心がけております。引き続き血液透析患者さんが出来るだけ安定した生活をおくることが出来るように努めてまいります。

 

七夕行事食

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは!一般病棟です。

 

暑い中皆さんバテていないですか?
熱中症対策のために水分はこまめに補給して暑い夏を乗り越えましょう!

 

7月7日は七夕でした!
という事で、ランチは七夕行事食でした!

 

メニュー

  • 天の川寿司
  • 鰆の照り焼き
  • 変りかき揚げ
  • 小盛そうめん
  • 七夕ゼリー

ちらし寿司で天の川を表現してくださっており、なかなか手が込んでいましたよ!
そして美味しそうに皆さん食べていました!

七夕行事食

栄養課さんありがとうございます!
そして今回も食にまつわる情報をメニューの下に載せてくださりました!
ためになるのでご紹介します!

アニサキス説明

CKDによるアシドーシスの治療について

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

先日野生のムササビを観察しに行ってきました。思っていたより人里に近いエリアに生息しており、そして思っていたより大きく、空を飛ぶ姿に感動しました。

 

さて、今回は慢性腎臓病(CKD)における合併症の一つである代謝性アシドーシスの治療についてのお話です。
Treating Metabolic Acidosis for CKD Progression? Need for Higher Quality Data 
Clin J Am Soc Nephrol. 2025 Jan 1;20(1):147-149

 

代謝性アシドーシスは血液の重炭酸塩濃度が22 mEq/L未満である状態で、原因は多岐にわたりますが、CKDはそのひとつの原因です。腎臓の機能が低下した際に、酸と塩基の調整を適切に行えなくなった結果として代謝性アシドーシスが生じ、CKDが進行するとより顕著になります。以前から代謝性アシドーシスは、腎機能がさらに低下すること、筋肉の機能が衰えること、そして心臓の収縮力低下や心拍数上昇をもたらす可能性があることなどが指摘されていました。このため、代謝性アシドーシスに対してアルカリ化剤で加療することが行われてきました。

 

代謝性アシドーシスの腎臓への直接的影響としては、腎臓内でアルドステロンやエンドセリンの分泌が増加し、これにより腎臓の間質の線維化が惹起され、腎機能障害がさらに進行していくことになります。また、代謝性アシドーシスに対して腎臓が酸性環境に適応しようとする過程でアンモニア生成を増加させ、その結果として、腎機能がさらに悪化することがあります。実際に代謝性アシドーシスは、推定糸球体濾過率(GFR)の低下と強い関連があることが報告されています。アシドーシスが進行すると、腎機能の低下が促進され、最終的には末期腎不全に進行するリスクが高まります。

 

治療としては重炭酸ナトリウムの服用によるアルカリ化を図ることが一般的です。ひとつの報告では、重炭酸ナトリウムが投与された患者では、GFRの低下が1.8 ml/min/yearであるのに対し、投与されなかった群では3.4 ml/min/yearも低下したという結果もあります。アルカリ化療法は、腎機能の維持以外にも、高カリウム血症の是正や筋機能の改善、骨密度向上などの利益をもたらす可能性もいわれています。これらの効果は、CKD患者の全体的な健康を保つためにも重要といえます。しかし、この重炭酸ナトリウムをはじめとするアルカリ化療法は、腎機能の改善に寄与する可能性がありますが、いまだに明確な結論には至っていないようです。特に、大規模な臨床試験が必要とされており、現時点ではその効果についての見解が分かれています。

 

代謝性アシドーシスの治療は未だに議論の余地があるため、今後さらなる質の高い研究が必要と考えられています。特に、血清重炭酸塩濃度の最適なレベルや、新しい治療方法についての理解は十分ではないため、今後の大規模で信頼性の高い実験デザインに基づいた試験や、治療方法の多様性としてミネラルアルカリや酸を結合する非吸収性吸着薬の使用も含め、様々な治療法の効果を評価することが重要となります。

 

代謝性アシドーシスの治療がCKDの進行にどのように影響するかについては、現時点ではどの程度治療すべきか、どの薬剤が最適なのか、など明確な結論が出ていないものの、アルカリ化療法には一定の効果があるのではないかと考えます。今後のさらなる研究で、より効果的な治療法が見いだされ、CKD患者さんのQOLを向上させるための手助けになることを期待しています。

雨キャンプ

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、眼科です。

 

突然ですが、雨キャンプという言葉をご存知でしょうか?読んで字の通り、雨の中キャンプするという事なのですが、通常の晴れた日のキャンプと違って雨キャンプはまた別の良さがあるそうです。

  1. 虫がいない
  2. キャンプ場がいつもより空いている
  3. 雨の日の自然はまた違った美しさがある。

 

上記は、ネットで雨キャンプ・良さで検索した所、ヒットした事柄です。
私はキャンプが好きで、何度かキャンプに行きましたが、今まで晴れのキャンプをした事がありません。
そう、悲しい哉、私は雨男だったのです。

 

物心ついた頃からインドア派だった私は、特別雨が嫌いという訳ではありませんでした。
通学通勤で濡れるのは勿論好きという訳ではありませんでしたが、雨の匂いや降る音は寧ろ好き寄りでした。
最近のキャンプブームでアウトドアと出会ってからでした、こんなにも天候が気になり出したのは。

 

雨男なんじゃないの?

 

ある日のキャンプ中の事でした。
小雨が降りだしたので、皆タープの中に避難し、雑談を交わしていた所、隣に座る友達に冗談まじりにそう言われました。
そんな事無いよ〜と返そうとしたその時、蘇る思い出の数々…
どれもこれも雨。
次第に強さを増す雨の中、そ、そんな事…ないよ〜…。
私の言葉は雨音にさらわれ、生い茂る木々の中、静かに消えていきました。

 

家に帰り、今一度自分の行ったキャンプを思い返してみると、驚くべき事に、一泊二日のうち一日は必ず雨が降っており、両日晴れだった事は一度もありませんでした。
私だ…私でした。
野外でのイベント事ではそういえば必ず雨が降っていましたし、豪雨でイベントが無くなった事もしばしば。泥濘んだ道にこの身が慣れ過ぎておりました。

 

それからでした。雨に敏感になったのは。
天気予報で雨と聞くと、心の中で当日は晴れる様に強く祈りました。
しかしどれだけ祈った所で、天候にこの想いが届く筈もなく。
心の中に吊るした、てるてる坊主は虚しく項垂れるばかり。

 

私は考えを改める事にしました。
雨キャンプ。これです。
虫のいない雨キャンプ。かんかん照りでぐったりする事もない雨キャンプ。普段より少し涼しい雨キャンプ。しとしと降る雨音を聴きながらコーヒーを飲む雨キャンプ。
やはり人間、気の持ちようで変わりますね。

 

キャンプ当日、やはり雨は降りました。しかし私の心は雨キャンプにチューニングしていた為、取り乱す事はありませんでした。滞りなく、テントを設営し、食事の準備に取り掛かります。実際に虫も少なく、涼しく、道は泥濘みますが、とても良い感じです。
雨の中の自然も美しい。晴れのパターンを知らないので、比較する事は叶いませんが、自然はいつだって美しいのです。

 

雨キャンプ、中々良いじゃないと思いながら、次第に強くなっていく雨と風。流石に嵐はやめて〜なんて皆で話していると、気付けばタープ内にも雨が流れ込んで来ました。スコップで雨の逃げ道を作り、なんとか荷物の浸水は防いだものの、地面はぐしょぐしょに泥濘み、テントは泥だらけ。あまりの雨と風に、明日の朝、我々は無事なのだろうかとテントに籠り震えるばかり。バタバタザァザァと鳴る夜は中々寝付けない。自然って凄いなぁと想いを馳せる雨キャンプ。嗚呼、雨キャンプ…。

 

翌日は昨日の雨が嘘の様にすっかり晴れ、撤収も晴れた日の下に行う事が出来ました。
本当に凄い雨だったねと交わし合う我々。苦行とも取れるこの(豪)雨キャンプ。友達と共に体験したからこそ、テントに残る雨粒が太陽に照らされて輝いておりました。

 

雨男という言葉は、元を辿ると中国の古事から由来している様です。欧米では雨男の概念はあまり無いようで、アジアの気候や風土によるものなのでしょうか。

また、欧米では雨でも傘をささない様で、多少の雨なんて気にしないみたいですね。
そんなメンタルを持ちたいなと切に思いました。それでは。

ラゲブリオ

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、薬剤課です。

 

どんどん気温が上がっているにも関わらず感染症の猛威は完全収束する気配がありません
百日咳が子供ではなく大人でも流行ったり、いまだに新型コロナに罹患される方もいらっしゃいます。

 

さて新型コロナ治療薬として有名な『ラゲブリオ(モルヌピラビル)』ですが
この度リニューアルいたします。

 

いままでのカプセル剤から錠剤に剤形変更。
かつ1回4カプセルの服用が1回2錠へと変わります。
※1日2回 5日服用は変わりません。

長さ21.7mm      直径 7.64mmから長さ13.4mm    直径 8.2mmへ 
サイズダウンし飲みやすくなるようです

ラゲブリオ

MSD ホームページより抜粋
出典元:https://www.msdconnect.jp/products/lagevrio/info/kiseki_zaikei/

 

ボトルタイプは継承されるのはこのほうが飲み忘れることが少ないからだそうです。
服用し易くなりますが服用するような状況にならないことが一番。
夏場でマスクは息苦しくなりますが、まだまだマスクを完全に手放せない感染対策を必要とする状況が続くかもしれません。
特に人ごみの中に行かれる場合はご注意ください。

見守り、補い合える文化

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちわ、透析看護部です。

 

私は2年前に入職し、透析室で勤務する50代看護師です。
これまでの腎臓病看護の経験を活かせる場所で仕事がしたいと考え、30年振りに就活し、こちらにご縁がありました。
順応性や柔軟性が鈍くなる半面、まだまだ学ぶ気持ちは欲張りな私です。
部署を問わず、士気が高いスタッフの皆さんに見守られ、助けられながら3年目を迎えました。
おかげ様で、楽しく仕事をしています。

中でも、「病院全体で患者さんのシャントを守ろう!」を目標とする看護師5名のVA(バスキュラアクセス)係活動(図1)は、活発な意見交換が充実した時間です。アドバイザーである臨床工学技士の指導は、楽しみながら理解を深める貴重な時間です。
その他、腎臓病教室や地域の高齢者向けの介護教室(図2)、若いスタッフさんを集めた学習会等(図3)、経験を還元する機会も少しずつ増えてきました。

超高齢化社会ゆえに、どの産業においても「人手不足」は全国共通。当院においても例外ではありません。
ですが、ここでは「見守り、補い合える文化」があり、成長を助ける環境があると実感しています。
腎臓病看護に興味がある看護師さんはもちろん、私のように経験を活かしたい場所を探している看護師さん、進路で悩む学生さんの参考になればと思い紹介しました。

 

増え続ける慢性腎臓病。看護の専門性を求められる時代です。
「見守り、補い合える文化」の中で、楽しみながら腎臓病看護を実践してみませんか?

 

図1
取り組み1
図2
取り組み2
図3
取り組み3

透析導入の適切なタイミングについて②

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

今日は、前回のブログの続きでこの論文を中心に透析導入の適切なタイミングについてお話していきます。
Early Versus Late Initiation of Dialysis in CKD Stage 5: Time for a Consensus 
Kidney Int Rep 10: p 54-74, 2025

 

前回ブログ:透析導入の適切なタイミングについて①

 

前回お伝えした早期導入と遅めの導入の利点や欠点があるなかで、各国や地域において、透析の開始時期に関するガイドラインが存在し、以下に、現在の主要なガイドラインのポイントをまとめます。

 

  • KDOQI(米国腎臓財団提唱の腎臓病予後改善対策のガイドライン):
    透析の開始は、腎機能の具体的な測定値(例:GFR)に基づくべきではなく、尿毒症の症状や栄養状態、代謝異常の管理能力に基づいて評価するべき。
  • KDIGO(国際的な腎臓病のガイドライン):
    透析開始の基準として、導入は「腎不全に起因する症状や症候が存在する場合」と定義される。その中には、体液管理が難しい場合や栄養状態の悪化が含まれ、測定値としては通常GFRが5〜10 ml/minの範囲になることが多い 。
  • 欧州ガイドライン:
    GFRが15 ml/min未満の患者では、症状や栄養状態の悪化が見られた場合に透析導入を考慮するべきとし、多くの患者でGFRが6〜9 ml/minの範囲で症状が出ることが考慮されるべきである。
  • カナダ腎臓学会のガイドライン:
    成人に対して、GFRが15 ml/min未満の場合、「早めの導入」より「遅い導入」のタイミングを持って透析を導入することが推奨される。
  • 日本透析医学会ガイドライン:
    GFRが15 ml/min未満になった場合、腎不全の症状や日常生活への影響を総合的に評価した上で、透析を開始する判断を下すべき。

 

このように各ガイドラインにおいて、絶対的な測定値の指標や、症状や状態の指標はないものの、大まかにGFRが5-10 ml/min程度で症状も考慮して導入時期を決めるような印象かと思います。そしてこれらのガイドラインは時代と共に変化してきており、これまでの早期透析導入と遅延透析導入の比較に基づく臨床研究で、早めの導入の利益が証明されないことが示唆された研究結果などもあるため、内容が再検討されています。また、透析開始のタイミングは、患者のQOLに影響を与えるため、症状の有無が重要視されるようになってきたことなども背景にあります。

 

早めの導入と遅い導入を比較した唯一の無作為化試験(臨床研究の方法のなかでは結果の信頼性が高い研究方法)としてIDEAL試験の報告があります。この臨床研究は、オーストラリアとニュージーランドで行われ、透析開始は腎機能の指標であるGFR(推定糸球体濾過量)に基づいて評価されています。早期透析導入は、eGFRが10-15 ml/min、それに対して遅延透析導入は5-7 ml/minで開始されるタイミングで2つの群にわけて生存率などが比較されました。この試験の結果では、早期透析導入の効果が遅延透析導入に優越しないことが示されました。しかし、この結果は早めの導入が遅めの導入より生存率などの結果が優れないということで、遅めの開始が優れるという結果ではないことには注意が必要です。

 

結局のところ、未だに早期導入、遅い導入の定義自体が明確ではなく、また、早め、遅めでの導入のタイミングの違いによる明らかな生命予後など治療成績の差は見いだせておらず、より精度や信頼性の高い臨床研究が待たれるということのようです。

 

というわけで現状では、データや症状、そして生活背景などを考慮して、出来るだけQOLが維持できるように、患者さん個人個人にとって適切な導入のタイミングを見極めて、相談しながら治療をすすめていくという方針に変わりはないと思います。
個人的な見解としては、あまりに透析の導入を遅らせる結果として、尿毒症症状の急激な悪化による緊急入院や緊急透析導入により、前述したようにカテーテルの挿入や入院期間の延長や体力の低下などが懸念されるため、極端な遅延導入は出来るだけ避けるべきだと考えます。その一方で、すべてを懸念するあまりに時期尚早なタイミングで始める必要もないと思いますので、しっかりと時間をかけて、患者さんとご家族、そして医療従事者が話を重ねて、来るべき時に備えて治療方針やいつから導入すべきかを共有しておくことが重要と考えています。

透析導入の適切なタイミングについて①

森下記念病院のスタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、院長です。

 

今日は昔から議論が続いている透析導入の適切なタイミングについて、これまでの研究をまとめた最新の総説を中心にお話していきます。
Early Versus Late Initiation of Dialysis in CKD Stage 5: Time for a Consensus 
Kidney Int Rep 10: p 54-74, 2025

 

透析の開始時期が腎機能が低下した患者さんの健康に与える影響についての議論はこれまでも多くの研究のテーマになっており、特に慢性腎臓病(CKD)の患者さんにおいて、透析の早めの開始と遅い開始の違いについて多くの研究が行われていますが、絶対の答えはない状況でした。本論文では、進行したCKDの患者さんにおける透析開始時期の早い導入と遅い導入についてこれまでの報告をまとめて比較し、患者さんの予後に与える影響、死亡率や合併症の発生率、患者さんの生活の質(QOL)について探っています。

 

透析の開始時期については、早期透析と遅延透析のそれぞれに利点と欠点があり、以下そのポイントをまとめます。

 

早期透析導入のメリット

  • 栄養状態の改善: 早期透析により、尿毒症により悪化した栄養状態がより早く改善される可能性がある。
  • 入院率の低下: 早期に透析を始めることで、尿毒症症状の急激な出現(体液過剰による呼吸苦、心不全症状や著明な倦怠感、不整脈、意識レベル低下など)による入院の必要性が減少する可能性がある。
  • 心臓病リスクの低減: 早期に透析を開始することで、心血管系の健康に対するリスクを低減できる可能性がある。
  • 全体的な生存率の向上: 早期の透析導入では、一部の研究では生存率の改善が示されている。 

 

早期透析導入のデメリット

  • 腎機能の早期喪失: 早めの段階から透析を行うと、透析導入後も残っている腎機能(残存腎機能)の喪失が早くなり、自尿が早く喪失する可能性がある。
  • 透析関連合併症のリスク: 早期透析開始は、感染症や血栓形成のリスクを増加させる可能性がある。
  • コストの増加: 早めに透析を始めることは、医療費が増加し、必要なスタッフや透析の機械の増加を必要とする。
  • 生活の質への影響: 透析による時間的や身体的な拘束が早期から負担となりQOLへの影響を及ぼす可能性がある。

 

遅延透析導入のメリット

  • 腎機能の保持: 自分の腎機能を早期導入に比べてより長く活かせる可能性がある。
  • 心血管イベントのリスク低減: 一部の研究では、遅延透析が心血管イベントのリスクを低下させる可能性があると報告されている。
  • 社会的支援の強化: 透析導入までの期間をなるべく長く確保することで、周囲のサポートや社会的支援などを得られる準備が整う可能性がある。

 

遅延透析導入のデメリット

  • 死亡リスクの増加: 透析導入を遅らせることで、透析導入により回避できた可能性のある死亡リスクが回避できず死亡率が上昇する可能性がある。
  • 急性症状の出現: 透析を遅らせることで、急激な尿毒症症状を発症し、緊急的な治療が必要になる可能性がある。透析に必要な内シャントなどのアクセスが準備できていない場合にはカテーテルでの緊急導入となり、カテーテルによる合併症の発症や長期入院のリスクとなる。
  • 生活の質の低下: 進行したCKDの状態が続くと栄養状態が低下し、筋力の低下などを伴い、全体的なQOLが低下し、透析導入後も改善が乏しい可能性がある。

 

少し長くなってしまいそうなので、次回のブログで各国の透析導入のタイミングのガイドラインや臨床研究の結果などをお伝えしていきます。

ホルター心電図検査

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、生理検査課です。

 

皆様、今年の健康診断はお済でしょうか?
私たちは5月に春の職員健診がありました。
健診項目の一つである心電図、異常を指摘されたことはありませんか?

 

心電図とは心臓の電気的な活動を記録したもので、不整脈などを見つけるための検査です。
実際に行う心電図検査は10~20秒程度の記録となり、検査時に動悸などの症状があれば不整脈を見つけることが出来ますが、それ以外の時に出現する不整脈などは見つけることが出来ません。

そんな時にホルター心電図検査というものがあります。

この検査は24時間機械をつけたままで生活していただき、その後解析を行います。
24時間の間に心臓は一般的に10万拍の脈を打っており、解析には少々の時間が必要となります。
しかし自覚症状がある時間の心電図や就寝中の心電図などが確認でき、致死性不整脈が見つかることがあります。
もしも自覚症状があるものの受診していない方や健診で異常を指摘されたまま放置している方は是非、循環器の受診を考えてみてくださいね。

 

当院循環器科の診察は水曜日・土曜日の午前中となっておりますので、受診を考えている方はご相談ください。

リブレ2を付けてみた感想

森下記念病院スタッフブログをご覧の皆様、
こんにちは、診療部門支援課です。

 

今回は血糖値を持続的に測定できるリブレという医療機器についてのお話しをします。
今までの血糖測定器は測定毎に指先などに針を穿刺し測定を行っていました。FreeStyleリブレと呼ばれるこの測定器では、とても短い針のついた小型センサー部を上腕後部に装着し、リーダー機器をタッチするだけで血糖が測定できます。最長14日間装着が可能で、穿刺する事無く測定が可能となる機器になります。

 

昨年12月某日、旧リブレから新たにリブレ2に切り替わるため、院内で勉強会がありました。
そこで株式会社Abbott様から試供品としてリブレ2のセンサーを頂いたので使ってみた感想を書いていきます。

 

今までのリブレはリーダーの機械を8時間ごとに当てないと血糖値が記録されませんでしたが、リブレ2はスマホと連携することで24時間血糖値が記録されます。
ご本人とスマホが6メートル離れるとその間は記録されないので注意が必要ですが、ご自身で機械を当てる手間が省けるのは大きなメリットだと感じました。
また、スマホアプリで気になった時に気軽に血糖値を見られるので便利ですし、リーダーを使用するよりも日常的な感覚で確認できるので、血糖値チェックの習慣化に繋がると思いました。
さらにメモ機能が付いており、食事のタイミングなどをメモしておくと後から見返した際に便利でした。

 

数日間付けていると自分の血糖値の変動パターンが見えてきました。
休日におやつをだらだら食べた日は血糖値の変化が平行気味だな、仕事の日は昼食後に血糖値が急上昇しているな、などグラフで可視化する事で自分の生活を見直す良い機会になりました。
また、少し具合が悪いかも?と思った際にたまたまアプリを見たところ、低血糖気味だったことが分かり体調悪化を防ぐこともできました。
貴重な体験が出来たことに大変感謝いたします。

 

詳しい使用方法はリブレ2を使用する方を対象に外来処置室でご案内いたしますのでご安心ください。
リブレ2をこれから使う方、興味がある方の参考になれば嬉しいです。